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過去最悪規模の人道危機にあるアフガニスタンで日本が今するべきこと

「アフガニスタンの人たちを見捨てない」というメッセージを体現することが重要

小美野剛 ジャパン・プラットフォーム共同代表理事 CWS Japan事務局長

JPF、CWS Japanによる支援

 私が共同代表理事を務める「認定NPOジャパン・プラットフォーム」(JPF)は2001年からアフガニスタン支援を行っている。JPFはNGO、経済界、政府が対等なパートナーシップのもとに協働し、日本の緊急人道支援を迅速に展開するために00年に発足。現在43のNGOが加盟し、日本を含め世界中で紛争や自然災害の被災者支援を行っている。

 アフガニスタンでは、主に食料など緊急支援物資の配布、衛生・防災・地雷回避などの啓発、教育環境改善、生業支援などの支援を展開し、現在までに支援を行った対象者は約200万人に達する。

 JPFの加盟団体で、私が事務局長を務める「特定非営利活動法人CWS Japan」も、アフガニスタンで緊急人道支援、防災・減災の支援を展開してきた。

 アフガニスタン北部では2014年に大規模な地すべりが発生、2000人あまりが命を落とした。村が消え、救出困難と判断された場所は集団墓地となった。アフガニスタンでは、日本では当たり前のようにやられている災害リスク分析や警戒区域設定などがなく、平時の防災・減災が重要視されていなかったことなどが原因だった。

 そこでCWS Japanは、災害リスクを評価する能力を高め、政策提言を通じて防災・減災を重要視してもらう活動などを、外務省NGO連携支援無償資金を使って実施してきた。アフガニスタンは日本と同様、国土の四分の三が山地である。防災・減災は、土砂災害や洪水リスクと向き合ってきた日本の経験や強みが活かせる協力分野だと思う。

拡大東部の土砂災害危険地区©CWS

過去20年間の支援で築かれたもの

 私達のような民間の支援によって築かれたものは多い。例えば、前述した防災力向上支援によって、現在までに100名を超える技術者を養成し、それぞれが災害リスク分析やGISを活用したハザードマップを作れるようになった。また、NGOの政策提言や国家災害省のリーダーシップによって、アフガニスタンの国家防災戦略や5カ年計画などの整備も進んだ。

 以前は「災害が起きた後の対処」が主だったのが、現在では「事前にリスクを把握しそれを削減すること」が国家防災戦略に明記され、技術者を養成する「研修コース」をカブール大学と設立するべく、現在準備を進めている。2015年に仙台で開かれた国連防災世界会議で採択された仙台防災枠組の現地語版も作成し、政府・支援機関などの防災関係者への周知も進んだ。

 特に注力したアフガニスタン東部では、パキスタンからの帰還民が洪水リスクの高い場所に住んで被災する例が多かったが、今では家を建てる場所を決める前にハザードマップを確認するようになった。その際、彼らは「守れる命は守るのが当たり前だ」と言っていたが、防災のあるべき姿がそこに感じられた。

拡大東部の土砂災害危険地区視察©CWS

 JPFの加盟団体の支援では、現地主導で衛生、地雷回避、教育の重要性などの啓発を行えるよう、知識や技術の現地移転に努めてきた。学校校舎の建設・改修や、井戸・灌漑設備などのインフラも、現地で引き続き使用されている。また、現地の教師が自らが主体的に教育環境を改善できるよう、共に歩んできた。その過程で現地のコミュニティとの良好な関係を築くことができ、その関係性は今回の様な有事でも崩れていない。

 私たちのような民間からの支援だけではなく、各国政府から対アフガン政府への公的な支援や国際機関を通じた支援もあり、アフガニスタンの状況はこの20年間で着実に改善してきた。

 例えば、平均寿命が56.3歳から64.8歳に延びた。タリバン前政権崩壊(2001年)までは女子は中学以上の高等教育を受けられなかったが、現在は女子の約4割が教育を継続できるまでになった。乳幼児死亡率や妊産婦死亡率も2000年と比べて、半数近くまで下がった。

 保健・教育・所得の側面を測る人間開発指数(HDI)では、2000年の0.35から2019年には0.51まで改善した。ちなみに日本のHDIは0.92である。900万人近くがインターネット通信環境を享受し、ソーシャルメディアのユーザーも440万人いると言われている。過去20年間の支援によって築かれたものは多い。


筆者

小美野剛

小美野剛(こみの・たけし) ジャパン・プラットフォーム共同代表理事 CWS Japan事務局長

1980年生まれ。特定非営利活動法人CWS Japan事務局長及び認定NPOジャパン・プラットフォーム共同代表理事。アジア防災緊急対応ネットワーク(ADRRN)理事兼事務局長、防災・減災日本CSOネットワーク(JCC-DRR)共同事務局、支援の質とアカウンタビリティ向上ネットワーク(JQAN)代表などを兼務。アフガニスタン、パキスタン、ミャンマー、タイなどの現場を経て東日本大震災から日本の事業も開始した。同志社大卒業、ブランダイス大学大学院開発学修士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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