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国民のための思いを持てず、国のあるべき姿を考えぬまま総理になった菅氏の1年

民が離れ、官僚が萎え、同僚議員も離反~私利に囚われた末の退陣表明の構図

花田吉隆 元防衛大学校教授

官邸が人事を握り、官僚機構は骨抜きと忖度に堕した

 何より、深刻と思うのは、官僚機構が換骨奪胎されたことだ。

 安倍内閣が旗印とした官邸強化で縦割り行政が是正されると期待したが、結果は、省庁幹部の人事権を官邸が握ることにより官僚が骨抜きになってしまった。中心となって進めたのは官房長官だった菅氏だ。官僚操縦のカギが人事であることは疑いない。これを各省が分掌すれば「縦割り」となり、官邸が集中管理すれば「忖度」を生む。人事はかくも難しい。

 しかし、骨抜きと忖度では官僚機構は機能しない。何より、そんなところに入ろうと思う有為な若者がいない。組織は人だ。どれだけ優秀な人材を集められるかがカギだ。明治以来、日本は官僚が高い地位を占めてきた。それは弊害もあったが、官僚の士気を高めることにも役立った。この士気が萎えて何の官僚組織か。

拡大森友学園への国有地売却問題を巡る財務省の公文書改ざんが2018年3月、報道で発覚。財務省は改ざんを認め、幹部ら20人を処分した。写真は前年4月に衆院決算行政監視委で売却問題について答弁する同省の佐川宣寿理財局長。右端は安倍晋三首相

権力保持の瀬戸際に、得意の人事で行き詰まる

 「已むに已まれぬ思い」を内に持たず、単に政治を「権力」を軸に見ると、自らがその「権力」を喪失しかねないという極限状態で思わぬ行動に出てしまう。

 総裁選の対抗馬が「党役員人事は一期一年で三期まで」と打ち出した時、菅総理は何を思ったか、自らも「党役員人事の刷新」で対抗するとした。

 得意の人事で、政権浮揚が可能と判断したのかもしれない。しかし、残り僅かの任期しかなく、就任してもすぐ辞めなければならないかもしれない。何より、役員に就任すれば次の政権で干されることもあり得る。そういう「泥舟」に、好き好んで乗り組もうという向きは普通はない。案の定、人事で行き詰った。

拡大自民党総裁選への立候補を決め、記者会見に臨む岸田文雄前政調会長=2021年8月26日、東京・永田町
拡大首相官邸に入る菅義偉首相。この日、官邸で自民党の二階俊博幹事長と会談し、近く党役員人事を実施して幹事長も交代させる意向を伝えた=2021年8月30日

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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