花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
民が離れ、官僚が萎え、同僚議員も離反~私利に囚われた末の退陣表明の構図
より深刻だったのが「総裁選先送りと解散総選挙」の噂が駆け巡ったことだ。これ自体は、権力維持の策略を練っていた菅総理が選択肢の一つとして考えていたに過ぎなかったが、報道を受け、話があっという間に広まっていった。
しかし、総裁選なしで、自民党が真剣に新総裁を選んだことを国民に見せられるわけもない。つまり、これは自民党の「自爆」解散を意味する。どこに自爆の大義があるか。「私利」のための自民党爆破でないか。
こういうのはすぐ人心を離反させる。自らの権力保持のためには、なりふり構わない、組織も仲間も道連れだ。これでは、ついていこうという者はいない。事ここに至り、既に離反していた国民に加え、同僚議員も離れていった。
これが結局、致命傷になった。総理自ら党本部に出向いて総裁選出馬の意志を幹事長に伝えておきながら、翌日に「断念」を表明する急展開を強いられた。表明は短時間で報道陣の質問は受け付けず、国民向けの詳しい説明もなかった。振り返れば、致命傷の一手を放ったのは「一期一年で三期まで」と言った対抗馬だった。