小宮京(こみや・ひとし) 青山学院大学文学部教授
東京大学法学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は日本現代史・政治学。桃山学院大学法学部准教授等を経て現職。著書に『自由民主党の誕生 総裁公選と組織政党論』(木鐸社)、『自民党政治の源流 事前審査制の史的検証』(共著、吉田書店)『山川健次郎日記』(共編著、芙蓉書房出版)、『河井弥八日記 戦後篇1-3』(同、信山社)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
幕末の日本とフリーメイソンの関わりを通観し、龍馬についての風聞の真贋に答える
「実はフリーメイソンについて研究していまして……」と言うと、多くの人がギョッとした表情を浮かべる。そのまま聞かなかったふりをされることもあれば、それではと質問をいただくこともある。
質問される場合、たとえば次のようなやりとりになる。
Q:フリーメイソンって本当に存在するんですか?
A:存在します。東京タワーの近くに日本グランド・ロッジがありますよ。
Q:きゃりーぱみゅぱみゅがフリーメイソンだって本当ですか?
A:多分違います。日本グランド・ロッジの入会希望のフォームには「定収入のある成人男性」と書いてあるから、女性は入れないと思いますよ。
実際にいただいた質問のごく一部を再現してみたが、おおむね、実在を疑う声、誰が入っているのかを気にする声あたりに集約される印象だ。
フリーメイソンの“研究家”としては、基本的な事実が知られていないことを痛感し、いささか残念でもある。ネット上で、フリーメイソンは秘密結社だという風評ばかりが目立つからだろうか。
本稿では、かつて論座で「公開」した「日本のフリーメイソンのこと知ってますか?(上)」、「日本のフリーメイソンのこと知ってますか?(下)」に引き続き、フリーメイソンの実態について、資料に基づいて紹介したい。それは確かに存在し、興味深い史実が満載なのだ。
――坂本龍馬がフリーメイソンだったって本当ですか?
日本人なら誰でも知っているであろう幕末の志士・坂本龍馬が、秘密めかした結社の一員だったかもしれないという風聞は、少なからぬ人の興趣をそそるらしく、筆者は幾度かこういう質問を受けた。なにしろ、歴史上の人気者だ。確かめたくなる気持ちは分かる。
そこで今回は、フリーメイソンと幕末の日本との関わりを通観しつつ、「龍馬=フリーメイソン説」の真贋(しんがん)について、研究家としてお答えしようと思う。