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【16】経済を語ろう:甚大なアベノミクスの「負の遺産」

自民党総裁選候補者の経済政策は現実を無視した絵空事か

塩原俊彦 高知大学准教授

パンデミックによる追加緩和

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックは世界同時不況を引き起こした。これに対処するため、各国はさらなる金融緩和に向かう。一説には、2020年3月以降の1年ほどの間に、中銀や政府は、世界の国内総生産(GDP)合計の3分の1に相当する27兆ドルの流動性を市場にあふれさせたとみられる。

 国際通貨基金(IMF)は2021年7月、同年6月5日現在の調査結果として、COVID-19のパンデミックに対応して政府が発表または実施した主要な財政措置をまとめた。2020年1月以降のCOVID-19関連の措置を含み、2020年、2021年、それ以降に実施される措置を網羅したものだが、それを示したのが下の「主要経済国におけるCOVID-19危機への裁量的財政対応」である。「追加支出と放棄された収入」と「エクイティ、ローン、保証」の合計のもっとも多いのは、日本であり、GDPの40%を超えている。ついで、イタリア、ドイツ、英国、フランス、米国、カナダ、スペインとつづく。

主要経済国におけるCOVID-19危機への裁量的財政対応拡大主要経済国におけるCOVID-19危機への裁量的財政対応。縦軸は2020年のGDPに対する割合、%(備考:黄色で囲まれたものは「主要経済国平均」を示している)
(出所)https://www.imf.org/en/Topics/imf-and-covid19/Fiscal-Policies-Database-in-Response-to-COVID-19
 ここで思い出すべきは「不思議の国のアリス」のなかにあるつぎのたとえかもしれない。「赤く熱した火かき棒は長く持っていると火傷する」という話だ。長く紙幣の輪転機を回しつづければ、ハイパーインフレという痛手につながるという必然を想起させるだろう。そう、世界はインフレ懸念の真っ只中に置かれている。ただし、デフレを抜け出せずにいる日本はこうした世界経済の趨勢からみると、明らかに異質な状況に置かれている。世界の経済的な潮流からも異端な状況にあるのだ(この問題は後述する)。

世界のインフレ懸念

 すでにインフレ現象はさまざまな分野に現れている。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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