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菅義偉首相は世論を“聞きすぎて”1年で退任した

強面の政治家はなぜ必要以上に世論を気にしたのか。危機の時代に必要は人材とは

加藤博章 関西学院大学国際学部兼任講師

 菅義偉首相が来月、退任する。最強の官房長官から転身。たたき上げの首相として政権を率いてわずか1年で、その役割を終えることになった。

 菅政権とはいったいどういう政権だったのだろうか。いま思うのは、世論の顔色ばかりを気にする政権だったということだ。官房長官時代の“強面”のイメージから、一見、世論を無視しているようでいて、この政権は実に世論を意識してきたと私はみる。発足から1年余りの歩みを振り返って論じてみたい。

拡大記者会見する菅義偉首相=2021年9月9日、首相官邸、代表撮影

実は世論を非常に気にした菅政権

 コミュニケーション能力がない。発信力がない……。菅政権、とりわけ菅首相についての世評はこういったものだろう。これに、「Go Toキャンペーン」の強引な実施、東京五輪・パラリンピックの“強行開催”などが加わり、菅政権は世論を無視しているという言説が、メディアを中心によく聞かれた。

 こうした世間に流布する言説にについて、「そうではない」というのが私の見方である。確かに、菅政権は発信力が不足しており、新型コロナウイルスの感染拡大という危機の時代に、国民に十分なメッセージを発することが出来なかった。とはいえ、世論を無視していたかというと、それは違う。むしろ、世論を必要以上に意識していたのが菅政権だったのではないだろうか。

 こういうと、「国民があれだけ反対していたオリンピックやパラリンピックを開催したではないか」といった反論が当然あるだろう。世論調査で五輪・パラリンピックの開催に否定的な意見が強いなか、それを押し切る形で菅政権が五輪・パラリンピックの準備を進め、実現させたという事実を否定するつもりはない。

 五輪・パラリンピックの場合、IOCとの関係などもあり、止めたくても止められない事情があったのだろう。だが、自らの判断で決められる政策について、菅政権は世論の逆風を受けると、方針転換をすることが少なくなかった。

 例えば、「Go Toキャンペーン」。鳴り物入りで始まった政策だったが、感染者が増加し、国民の批判が高まると中止となった。また、2021年5月14日には、まん延防止措置に止めるはずだった北海道、広島県、岡山県に緊急事態宣言を出す方針へと転換した。

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筆者

加藤博章

加藤博章(かとう・ひろあき) 関西学院大学国際学部兼任講師

1983(昭和58)年東京都生まれ。専門は国際関係論、特に外交・安全保障、日本外交史。名古屋大学大学院環境学研究科社会環境学専攻環境法政論講座単位取得満期退学後博士号取得(法学博士)。防衛大学校総合安全保障研究科特別研究員、独立行政法人国立公文書館アジア歴史資料センター調査員、独立行政法人日本学術振興会特別研究員、ロンドン大学キングスカレッジ戦争研究学部客員研究員、東京福祉大学留学生教育センター特任講師、一般社団法人日本戦略研究フォーラム主任研究員、防衛大学校人文社会科学群人間文化学科兼任講師を経て、現在関西学院大学国際学部兼任講師。主要共編著書に『自衛隊海外派遣の起源』(勁草書房)、『あらためて学ぶ 日本と世界の現在地』(千倉書房)、『元国連事務次長 法眼健作回顧録』(吉田書店)、「非軍事手段による人的支援の模索と戦後日本外交――国際緊急援助隊を中心に」『戦後70年を越えて ドイツの選択・日本の関与』(一藝社)、主要論文に「自衛隊海外派遣と人的貢献策の模索―ペルシャ湾掃海艇派遣を中心に」(『戦略研究』)、「ナショナリズムと自衛隊―一九八七年・九一年の掃海艇派遣問題を中心に」(『国際政治』)。その他の業績については、https://researchmap.jp/hiroaki5871/を参照。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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