先に若返りを図れた政党が今後の10年、20年の日本をリードしていく
2021年09月27日
自民党総裁選も29日の投開票まであと数日。菅義偉首相(自民党総裁)の退任表明から長い道のりだったが、長丁場となった総裁選はこれまでにない展開を見せ、「密室政治」から脱却したガチンコの戦いとなって、メディアもこれを大いに取り上げている。
誰が新総裁に選ばれるか、いろいろな情報が乱れ飛ぶが、現段階で確実といえるものはない。ただ、筆者は結果もさることながら、総裁選で浮上した党内の声がどれだけその後の党改革にいかされるかが、自民党の今後を左右すると考えている。今回の総裁選の後、自民党に何が残るかが大切なのだ。
今回の総裁選をベテラン議員と中堅・若手議員との戦いという切り口で分析する識者がいるが、それは半分正しく、半分間違っている。
確かに岸田氏の支持議員にはベテラン議員が多い。衆議院議員で岸田氏支持が判明している議員の平均当選回数は5.56回だ。一方、河野氏の支持議員は中堅・若手に多い。支持判明議員の平均当選回数は4.31回。また高市氏の支持議員も中堅・若手議員が多く、平均当選回数は3.98回と河野氏を下回る。安倍晋三元首相が支持を表明したことにより、いわゆる「安倍チルドレン」が支持した影響だろう。(※当選回数については投票先を表明した衆院議員について筆者が集計したもの)。
こうみると、ベテランが支持する岸田氏と、中堅・若手が支持する河野・高市という図式が浮かぶが、ことはそれほど単純ではない。
そもそも中堅・若手議員といっても、内情はばらばらだ。たとえば、中堅・若手議員らが総裁選を機に集まった「党風一新の会」は、90人あまりの賛同者を集めたが、ざっと三つのタイプに分けられる。すなわち、①代表世話人を務める福田達夫議員を中心とした「選挙に困っていない組」、②安倍首相の下で「風で受かってきた組」、③その中でも小選挙区事情で特に厳しい、もともと小選挙区をもたない「選挙に困り果ててる組」――である。
党風一新の会では、政務調査会改革や政治プロセスの透明化にくわえ、派閥のあり方の再定義を打ち出した。自民党の組織構造の根本をなす「派閥」を再定義するという改革案は、旧態依然の自民党に対して挑戦的であり、中堅・若手議員にとっては賛同しやすいものであろう。
ただ、前述の「選挙に困り果ててる組」には悩ましいところもある。彼らの中には、派閥の差配で選挙区を割り当てられたり、比例ブロックの名簿に掲載されたりするケースも散見される。こうした議員にとっては、改革より選挙に当選すること優先される。派閥の恩恵を強く受けている若手にすれば、「派閥政治」の負の側面は感じても、「派閥政治」のすべてを否定はできないのである。
それはともかく、党風一新の会が示す幾つかの改革路線は、無党派層も含めた若い世代の有権者には歓迎される内容である。近日中に衆院選、来年夏には参院選と政権の帰趨を左右する国政選挙が続くことからも、今回、改革の“爪痕”をどれだけ自民党に残せるかという点が注目されよう。
具体的には、総裁選を受けて誕生する新しい総裁が、派閥の影響を受けずに組閣人事・党人事を行い、党風一新の会の改革路線を認めることができるかが最初のポイントになるであろう。今回の総裁選をきっかけに派閥の再構築や議員の派閥移動がはじまれば、党風一新の会が党内で存在感を増すことも期待される。
くわえて、来年の参院選に向け、自民党では2次公認(新人・元職組)が近日中にある衆院選後にも発表されることになるが、この公認人事についても旧態依然の派閥論理ではなく、目新しい人材を発表できるかどうかも注目の的であろう。
ところで、今回の総裁選は、切り方によって、世代間の戦いの他にも様々な断面図が浮かび上がる。
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