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デジタルと新自由主義の結合がもたらすファシズムの危機~堤未果の警告・下 

個人の尊厳や自由が奪われた社会にしないために必要なこととは?

高瀨毅 ノンフィクション作家・ジャーナリスト

 コロナ禍で顕在化したデジタル化の後れを取り戻そうと、世界に「追いつけ、追い越せ」とばかりに進められる日本のデジタル政策。そこに潜むリスクを、「デジタル・ファシズムへの不安 利便性の背後にあるものは~堤未果の警告・上」に引き続いて考えます。『デジタル・ファシズム』(NHK出版新書)の著者であるジャーナリストの堤未果さんはなぜ、デジタル化の負の側面をそこまで強調するのか――。堤さんの動画と合わせてお読みください。(論座編集部)

◇動画

 スウェーデン出身の世界的ポップグループ「ABBA」が40年ぶりに再結成されることになった。ニュースが報道されたのは9月2日。ニューアルバム「Voyage」が11月に発売予定で、世界中のファンが心待ちにしていることだろう。

ABBAのギタリストがデジタル社会推進活動

 ABBAのメンバーでギタリストのビョルン・ウルバースが、デジタル社会推進の活動をしているのを知っているだろうか。それはキャッシュレスによる犯罪撲滅運動だ。ビョルンはこう言っている。

 「現金なんか時代遅れだ。偽造されるし闇社会をはびこらせる。一体みんな何だって、あんな紙切れをいつまでも使いたがるんだ?」

 ビョルンには個人的な理由がある。本書によると、息子が強盗にあった経験から、現金を「憎んで」いるというのである。現金がなければ強盗もできないし、国家が現金を維持する巨額の費用も節約できるという。

 首都ストックホルムのABBA博物館には、ビョルンのメッセージが展示してある。

 「かつてないほどに効果的な犯罪防止策を始めるのに、スウェーデンは世界初のキャッシュレス社会になるべきだ」

拡大Gustavo Frazao/shutterstock.com

手に埋め込んだマイクロチップで決済も

 キャッシュレスは銀行にとってもメリットが大きい。決済のたびに手数料が入り、一方で現金を維持するための手間と費用は節約できるからだ。銀行は、都市部だけでなく農村地帯からもどんどんATMを撤去してしまった。

拡大堤未果さん
 スウェーデン国内決済のキャッシュレス化は99.9%。ほぼ完全キャッシュレス。それ以上に驚くのは、人口1000万人のうち、約4000人(18年時点)が手の甲に埋め込んだマイクロチップで決済をしているのだという。

 日本では、22年6月からペットに飼い主の情報が入ったマイクロチップの埋め込みが義務化されるが、スウェーデンはすでに人間が対象だ。最初は「サイボーグになりたい願望」をもつパンクなハッカーたちがチップを埋め込んだのが始まりで、やがて一般市民にまで広がった。

 マイクロチップに関して言えば、日立製作所が世界最小、0.05ミリ四方のマイクロチップを07年に開発している。前回少し書いたスーパーシティーでも大いに普及するだろうと著者は推測している。世界経済フォーラム(国際的な経済問題に取り組むために、世界の指導者の交流促進を図る非営利団体)の創設者、クラウス・シュワブ会長は、16年にスイスの公共放送に出演し、「今後10年以内に、全人類を対象にした『埋め込み型マイクロチップ』が世に出るだろうと語っている。

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筆者

高瀨毅

高瀨毅(たかせ・つよし) ノンフィクション作家・ジャーナリスト

1955年。長崎市生まれ。明治大卒。ニッポン放送記者、ディレクターを経て独立。『ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」』『ブラボー 隠されたビキニ水爆実験の真実』など歴史や核問題などの著作のほか、AERAの「現代の肖像」で人物ドキュメントを20年以上執筆。ラジオ、テレビのコメンテーターなどとしても活躍。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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