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なぜアメリカは、感染拡大でも再ロックダウンを選ばないのか?

ワクチンと多面的措置で共存のコンセンサス。日本でも求められる戦略と国民への説明

佐藤由香里 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 研究員

【回避措置1:経済】 ロックダウン解除、景気は順調に回復

国内の規制の現状

 米国でデルタ株蔓延が被害を拡大し始めた7月、それまで1年以上継続されていた「ロックダウン」が事実上、全米で解除された。AARP(全米退職者協会)の調べによれば、現在は50州中47州において規制解除("fully reopened")の状態にある(10月1日現在)。

 残るカリフォルニア、ハワイ及びカンザス州では、原則的にロックダウンは解除されながらも、ワクチン未接種者に対する陰性証明書の提出、施設収容率の一部制限など、一定条件下での感染予防対策強化がそれぞれで行われている状態である。

拡大大勢の観客が原則、制限なしに入場して観戦を楽しむ大リーグ、エンゼルスタジアムのスタンド=2021年9月18日、米アナハイム

●CDCが7月27日に設けたマスク着用に関するガイドラインでは、ワクチン接種完了者に対しては感染リスクが高い場所でのマスク着用が推奨され、未接種者に対しては、室内ではいかなる状況においてもマスク着用を促している。

●各州政府は、基本的にCDCガイドラインを踏まえた上で感染対策措置を実施している一方、地方自治体や民間企業によっては、規制を更に厳格化しているケースもある(ニューヨーク州と厳格な措置を執るニューヨーク・シティの対比が好例)。

●州によって細かな差異はあれど、自治体規模の移動制限やビジネス閉鎖、飲食店における提供制限等の措置は実施されていない。

経済指標

拡大感染対策のための屋外飲食がすっかり定着している=ニューヨーク
 一部地域における感染拡大の懸念はあれど、経済対策の現金給付や、ワクチン接種の拡大に伴い新型コロナパンデミック以来の米国の景気は順調に回復している模様である。

 米商務省によれば、実質GDPは2021年1~3月期にコロナ禍前の2019年10~12月期を0.9%下回る水準まで回復した(図1)。4~6月期の実質GDP改定値は、前期比6.6%増となり、4四半期連続プラス成長(コロナ禍で過去最高)を更新。個人消費、設備投資や公共投資がけん引し、新型コロナウイルス危機からの回復が改めて確認された。

 個人消費ではコロナ禍で大きく落ち込んでいた娯楽や宿泊・飲食などのサービスセクターの回復が本格化している。更にコロナを機に新規事業を開始する人々も増加しており、2018~19年と比較し、20~21年の開業届申請は増加傾向の一方、倒産届が減少傾向にあるという(ブルッキングス研究所による分析

 3月の経済対策(1.9兆ドル規模)に引き続き、米国議会は1兆ドル規模のインフラ投資計画や、3.5兆ドルの予算決議案の実現などに向けて動いている。

拡大

経済活動の進展を求める声の高まり

 7月21日付ウォールストリート・ジャーナルは、「デルタ株蔓延が米国経済に劇的な影響を及ぼすことはない」との分析を掲載。その根拠は、①新規感染の拡大に関わらず、米国人は労働と消費の継続をより好む傾向にあること(ワクチン接種の拡大はその傾向を助長している)、②パンデミック初期のようなロックダウンに戻る意欲が低いこと、③感染爆発は特定の地域に限られ、またそれらの費用対効果は米国全体としては限定的であること、が挙げられた。

 例えば、ケンタッキー州の公衆衛生責任者は、「今回(デルタ株)のパンデミックでは我々にはワクチンがある。即ち、再度ロックダウン(都市封鎖)を行う必要性も、人数制限を行う必要性もない。更なるワクチン接種推進を図りながら、必要あればマスク着用も促す。これを行えば、パンデミックに打ち勝つことが出来る」と述べている。

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筆者

佐藤由香里

佐藤由香里(さとう・ゆかり) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 研究員

カルフォルニア州立大学で学士号(国際関係論)、ワシントン・セントルイス大学で理学修士号(公衆衛生学・MPH)取得。米国中西部の地域病院プロジェクトマネージャー、在米デンバー総領事館専門調査員(政治・経済・広報文化)など8年間の米国生活を経て2019年7月に帰国。同8月より現職。注力テーマは米国の内政・選挙、公衆衛生、社会問題。国際戦略研究所ウェブサイト『考』に分析レポートを掲載。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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