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法律の改正や廃止を国民が自ら発議し自ら決める~イニシアティブ制度による政治参加を(下)

刑法改正、同性婚、原発……各国の「民主制実践」の取り組み

今井 一 ジャーナリスト・[国民投票/住民投票]情報室事務局長

地方自治体でも活用されている

 ここまでは国レベルでの事例を紹介してきたが、このあとは、自治体レベルで「住民発議・住民拒否」が活用されている事例をアメリカを中心に紹介する。

 アメリカでは、コロラド、カリフォルニア、ミシガン、マサチューセッツ、ワシントンなど多くの州が住民発議・住民拒否の制度を備えている。

 ただし、発議の対象とならない事柄(ネガティブリスト)は州によって異なり、例えば、カリフォルニアでは「緊急事態に対処する法律。選挙の実施に関する法律。租税の徴収に関する法律および州の通常経費の支出に関する法律」は、対象から除外されている。

 また同州では、憲法発議に必要な署名数は有権者の8%で、法律発議あるいは法律拒否の請求については5%と規定されている。

 アメリカ全土の州レベルとしては、2001年以降だけで600件以上の発議がなされ、そのうち265件以上が住民投票で可決されている。

 1901年以降2600件を超す州規模での住民投票(州民投票)が行われているが、それぞれどういう案件が発議されたのか、ここでは12件のみ紹介する。

 1914年 ネブラスカ   女性投票権を認める      反対多数

 1914年 オレゴン    死刑の廃止          賛成多数

 1932年 ノースダコタ  公務員給料の見直し      賛成多数

 1954年 ワシントン   アルコールのTVCM規制     反対多数

 1972年 カリフォルニア マリファナの合法化      反対多数

 1972年 コロラド    冬季五輪のための税の禁止   賛成多数

 1976年 アリゾナ    原発の段階的廃止       賛成多数

 1994年 オレゴン    尊厳死を認める        賛成多数

 1998年 ミシガン    尊厳死を認める        反対多数

 2008年 カリフォルニア 同性婚を禁止する       賛成多数

 2010年 ミズーリ    ドッグブリーダー規制     賛成多数

 2016年 カリフォルニア ポルノ俳優コンドーム装着義務 反対多数

 アメリカでこうした「住民発議」が盛んに行われていることは、専門家の中では常識だが、日本では一般的には知られていない。

ミズーリ州の住民投票で労働権の導入が否決される見通しになり、喜ぶ労組メンバーたち=2018年8月、セントルイス、江渕崇撮影 拡大ミズーリ州の住民投票で労働権の導入が否決される見通しになり、喜ぶ労組メンバーたち=2018年8月、セントルイス、江渕崇撮影

 私がイニシアティブ制度の導入を唱えると、多くの人が「非常識だ」とか「そんな特異なこと……」といった反応を見せる。しかし、アメリカの例を見てもわかるように、非常識でも特異なことでもないのだ。

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筆者

今井 一

今井 一(いまい・はじめ) ジャーナリスト・[国民投票/住民投票]情報室事務局長

 1991年以降、ソ連、ロシア、スイス、フランス、イギリスなどで国民投票の取材を重ね、国内では新潟県巻町、名護市、徳島市など各地で実施された住民投票を精力的に取材。2006年~07年には、衆参各院の憲法調査特別委員会に参考人及び公述人として招致され、国民投票のあるべきルールについて陳述する。著書に『CZEŚĆ!(チェシチ)──うねるポーランドへ』(朝日新聞社)、『住民投票』(岩波書店)、『「憲法9条」国民投票』(集英社)、『国民投票の総て』、『住民投票の総て』(ともに[国民投票/住民投票]情報室)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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