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野党共闘は期待するものではなく創っていくものだ~市民と政党のこれからの関係

「投票に行こう」の時代は終わった。「私たち」の政府を創る社会へ

馬奈木厳太郎 弁護士

拡大衆議院が解散され、万歳をする議員たち=2021年10月14日午後1時3分

1.総裁選と組閣報道があふれた1カ月。野党共闘の意義と課題は

 10月14日、衆議院が解散された。この1カ月あまり、メディアは多くの時間を自民党の総裁選と組閣人事に割き、いったいどれほどの需要があるのかわからないが、総裁候補者の好物や受験の失敗歴までもご丁寧に紹介してきた。

 対する野党については、統一候補の調整をめぐるドタバタが目に付く程度といったら言いすぎだろうか。メディアでは必ずしも十分には扱われていない野党共通政策や野党共闘を題材に、その意義と課題について考えてみたい。

拡大市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)と政策合意した野党4党の代表ら=2021年9月8日、国会内

2.野党政策合意に市民連合が尽力 安倍・菅政権との差異提示

 9月8日、立憲民主党、日本共産党、社民党、れいわ新選組の4党は、野党共通政策に合意した。

 この合意に際しては、安保法制をきっかけに結成された市民連合がとりまとめに尽力した経過があり、市民の側から各政党に対して提言という形で共通政策を提起したことも、政党と市民の関係を考えるうえでは意義深い。

 合意された内容は、①憲法に基づく政治の回復、②科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化、③格差と貧困を是正する、④地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行、⑤ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現、⑥権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する、という6分野にわたっている(全文は、こちらから)。

 抽象的な表現にとどまるものもあるが、安保法制の廃止、辺野古新基地建設の中止、消費税減税、原発のない脱炭素社会の追求、選択的夫婦別姓やLGBT平等法の成立、議員間男女同数化(パリテ)推進、森友・加計学園や桜を見る会などの真相究明など、この間の安倍・菅政権との差異化が図られており、目指そうとする方向性についても一定程度示されている。

拡大市民連合と政策合意を結ぶ調印式で、言葉を交わす立憲民主党の枝野幸男代表とれいわ新選組の山本太郎代表
拡大市民連合との政策合意の後にひじタッチをする共産党の志位和夫委員長とれいわ新選組の山本太郎代表

原発や基地、外国人労働などで不足も合意の意義大

 とはいえ、全ての政策が網羅されているわけではない。

 たとえば、原発に関していえば、福島原発事故によって生じた汚染水の海洋放出について反対するのかどうかは明らかではなく、本年3月に水戸地裁が避難計画の不備を理由に東海第二原発の運転差し止めを命じる判決を言い渡したが、避難計画を新規制基準に取り込むべきと考えているのかも明らかではない。

 あるいは、沖縄に関していえば、辺野古新基地建設については中止とされたが、南西諸島での自衛隊配備については触れられておらず、米軍基地から生じているPFASの処理についても触れられてはいない。

 防衛費についても、10年連続で過去最高を更新し続けているが、これを削減する方向で見直すのかも明確ではない。外国人労働者や入管、文化政策、歴史認識など、扱われていない分野も散見されるところではある。

 しかし、足りないところを指摘し不十分だとするのは、今回の合意の意義を見誤ったものである。

拡大安保法制関連法案の廃案を求めて国会前で声を上げる人たち=2015年9月15日、東京・永田町
拡大主催した「桜を見る会」であいさつする安倍晋三首相(中央)=2019年4月13日、東京・新宿御苑

重要分野で与党と明確な対抗軸・憲法観めぐる構図が鮮明

 むしろ、新自由主義やアベノミクスなどによって拡大した格差の是正や、権力の私物化とも称されてきた政権運営の透明化・健全化、家制度的な旧来の価値観からの解放や多様性など、重要な分野で政権与党との対抗軸を示したものと評価すべきである。

 なにより、基本的人権や自由、民主主義、平等といった大原則とされるべき価値観――憲法観といってもいいだろう――について、近接した政党同士が協力し、明確に異なる政党との間での対立という構図は、何をめぐる選択なのかをより鮮明にしている。

拡大政策対比表

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筆者

馬奈木厳太郎

馬奈木厳太郎(まなぎ・いずたろう) 弁護士

1975年生まれ。大学専任講師(憲法学)を経て現職。 福島原発事故の被害救済訴訟に携わるほか、福島県双葉郡広野町の高野病院、岩手県大槌町の旧役場庁舎解体差止訴訟、N国党市議によるスラップ訴訟などの代理人を務める。演劇界や映画界の#Me Tooやパワハラ問題も取り組んでいる。 ドキュメンタリー映画では、『大地を受け継ぐ』(井上淳一監督、2015年)企画、『誰がために憲法はある』(井上淳一監督、2019年)製作、『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』(平良いずみ監督、2020年)製作協力、『わたしは分断を許さない』(堀潤監督、2020年)プロデューサーを務めた。演劇では、燐光群『憲法くん』(台本・演出 坂手洋二)の監修を務めた。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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