野党共闘は期待するものではなく創っていくものだ~市民と政党のこれからの関係
「投票に行こう」の時代は終わった。「私たち」の政府を創る社会へ
馬奈木厳太郎 弁護士
3.立憲・共産「政権のありかた」合意―選挙前に国民へ明示
さらに、9月30日には、立憲民主党と日本共産党が政権のありかたについて協議し、①総選挙で自公政権を倒し、新しい政治を実現する、②「新政権」において、野党共通政策を着実に推進するため協力し、日本共産党は、合意した政策を実現する範囲での限定的な閣外からの協力とする、③両党で候補者を一本化した選挙区について、小選挙区での勝利を目指すことで合意した。

政権のありかたについての会談に臨む立憲民主党の枝野幸男代表と共産党の志位和夫委員長ら=2021年9月30日、国会内
このような形で政権のありかたについて選挙前に合意し、国民に明らかにして選挙戦に臨むのは、日本の選挙史においても、おそらく初めてのことである。日本共産党が、政権との関係について合意するのは初めてのことだが、日本共産党をめぐる様々なアレルギーが存するなか、立憲民主党が、選挙協力にとどまらず、政権樹立後の協力関係に踏み出したことは、政権交代に向けて協働が不可避であったとはいえ、その意義は決して小さくない。
政策の違いは違いとして尊重しつつ、一致する範囲で政策の実現を目指すという、連立政権や連合政権の実践は、一党一派のレベルを超えて、日本の民主主義にとっても重要な意義を有するものであり、将来において振り返った際、「一つの画期となった」と評価される合意ではないかと思う。
連合の反発に道理があるのか

連合会長に就任し、記者会見する芳野友子氏=2021年10月7日、東京都千代田区
立憲民主党と日本共産党の合意をめぐっては、連合が反発しており、新たに会長となった芳野友子会長は、「共産党との閣外協力はありえない」、「合意を盾に共産側がさらなる政策をねじ込もうとする動きがある」などと発言したと報じられている。
こうした反発は、立憲民主党や日本共産党にとっては織り込み済みだったのであろうか、立憲民主党は「連合に迷惑はかけない」と多くを語らず、日本共産党も強い反応は示していない。
そして、連合の反発に道理があるのかといえば、複数にわたる分野や政策で一致しているにもかかわらず、日本共産党を抜きにして政権交代を実現する現実的な展望をどう描くのかが全く不明であり、「政策をねじ込もうとする」という点も、政策が野党共闘の枠内のものであれば、誰が最初に言い出したのかはたいした問題ではないはずであって、ねじ込むといった表現には大人げない印象を覚える。
政権交代を目指すというのが野党共闘の一丁目一番地という現下の情勢をふまえたとき、連合の行動はそれを促進させる方向のものなのか大いに疑問である。
市民は共産をパートナーとして政権構想。政党が受容できるかだ
むしろ、日本共産党への偏見や反共意識が前時代的なものとなり、国会内外での日本共産党の活動がSNSなども通じて身近なものとなりつつある今日、市民の側が、日本共産党をパートナーとして政権のありかたを構想することについて、これを受容し、野党としての政権構想のスタンダードになるのかという点は大変注目されるところである。

「市民連合みやぎ」との政策協定書に署名した後、衆院選に向け気勢をあげる野党の立候補予定者ら。全選挙区で立憲と共産が競合を回避し、自民と対決する=2021年9月25日、仙台市青葉区

野党と市民の共闘は各地で進んでいる。衆院選での共闘で合意した山口県内野党5党と「市民連合やまぐち」。同県内の全4選挙区が野党統一候補になる予定=2021年9月27日、山口市元町