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外交・安保政策から観た総選挙~安倍路線継承の自民、「共闘」野党の立ち位置は

櫻田淳 東洋学園大学教授

 2021年総選挙は、2019年末以降の新型コロナウイルス・パンデミックの感染拡大が終息しない中で実施される。故に、直接的には特に安倍晋三(元内閣総理大臣)と菅義偉(前内閣総理大臣)の二代の宰相によるパンデミック対応への評価を問うものになる。

 菅における政権運営の失速は、パンデミック対応が本質的に「仕事の成果」を世に向けて語り難いたぐいの政策案件であったことによる。パンデミック対応には、何を以て「仕事の成果」と観るかの具体的な基準がない。しかも、「仕事の成果」それ自体をして語らしむという菅の職人肌の執政スタイルでは、感染が進行し経済も傷んでいく最中に国民各層からポジティブな評価を得るのは難しかったといえよう。

 ただし、筆者にとっての主な関心が外交・安全保障政策領域にある以上、今次総選挙に向けた筆者の観察もまた、そうした関心に則ったものになる。外交・安全保障政策の観点からは、今次総選挙には、どのような位置付けが与えられるのか。本稿では、そうしたことについて考えてみたい。

拡大「選挙サンデー」に衆院選候補者の演説に集まった人たち。候補者をスマートフォンで撮影したり、手を振ったりしていた=2021年10月24日、大阪市天王寺区

「安倍晋三の遺産」の承継と展開

 菅義偉の後継となった岸田文雄(内閣総理大臣)麾下の自民党は、今次総選挙に際しての勝敗ラインを「自民、公明両党で過半数」に設定している。それは「改憲勢力で三分の二を確保する」という線からは明白に後退しているかもしれないけれども、岸田は、たとえば安倍晋三ほどには、その線に執着していないであろう。

 安全保障政策の観点からすれば、憲法改正という政策案件それ自体は、既に象徴的な意味合いが濃いものになっている。憲法第9条改正などよりは、防衛費対GDP比2%確保といった具体的な政策方針が、安全保障政策の文脈からは、大事なものであるからである。

 仮に今次総選挙後に岸田の政権運営が続くことになれば、そこに現れるのは、「安倍晋三の遺産」が承継され、展開される風景であろう。ここで言う「安倍晋三の遺産」とは、具体的には政策枠組としてのQuad(日米豪印四ヵ国戦略対話)や政策概念としての「自由で開かれたインド・太平洋」の提示であり、それを通じた対外「影響力」の獲得である。

 そうした対外「影響力」を根底のところで裏打ちしているのが、2015年に策定された安全保障法制である。安全保障法制策定の結果、日本の安全保障は、従来の日米同盟という「線」としてだけではなく、多国間の協調による「面」として考える下地が出来上がった。

 おりしも、「クイーン・エリザベス」空母打撃群の極東回航は、英国がインド・太平洋方面に回帰する動きを象徴的に表した。岸田とボリス・ジョンソン(英国首相)は、日英両軍部隊の相互訪問時の地位を定めた日英RAA(相互アクセス協定)交渉を早期に妥結させる方針を確認している。こうした動きは今後、多様にして多層的なものになっていくのであろう。

 共同通信記事(10月17日配信)が報じたトレンド調査の結果は、「岸田政権が安倍、菅両政権の路線を継承するべきか」という問いを設定したうえで、「継承するべきだ」が26.7%、「転換するべきだ」が68.9%という数字を伝えている(参照)。ただし、外交・安全保障政策において、岸田は、「安倍・菅」路線を既に承継している。要は、それがどのように展開されるかということでしかない。

拡大衆院選の街頭演説で、有権者らの声をメモした「岸田ノート」を手にする岸田文雄首相=2021年10月22日、札幌市中央区

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筆者

櫻田淳

櫻田淳(さくらだ・じゅん) 東洋学園大学教授

1965年宮城県生まれ。北海道大法学部卒、東京大大学院法学政治学研究科修士課程修了。衆議院議員政策担当秘書などを経て現職。専門は国際政治学、安全保障。1996年第1回読売論壇新人賞・最優秀賞受賞。2001年第1回正論新風賞受賞。著書に『国家への意志』(中公叢書)、『「常識」としての保守主義』(新潮新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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