2021年10月26日
“静岡ショック”
10月24日投開票の参議院静岡選挙区補欠選挙の結果を受けた「静岡新聞」の見出しは、最終盤に向かう総選挙のゆくえに一撃を与えたこの選挙の影響の大きさを端的にあらわしている。
2021年6月20日に投開票された静岡県知事選挙に出馬した自民党参議院議員の失職に伴い行われることになったこの補選は、岸田政権が総選挙日程を前倒ししたことにより総選挙投開票日の一週間前に行われることになった。
この補選の結果が総選挙のゆくえに大きな影響を与えることを自民党はもちろん認識していたはずである。だとすると自民党には、補選では自民党候補が必ず勝利し、総選挙に向けた弾みになるはずだという楽観論が支配していたということになる。
事実、この補選では野党共闘は成立せず、立憲・国民両党が推薦する山崎真之輔候補と、共産党公認の鈴木ちか候補が立候補していた。10万票以上の集票力を持つ共産党が独自候補を立てたわけだから、自民党候補の勝利は確実であるとの判断であろう。
しかしこの判断は裏目にでた。山崎候補は自民系候補におよそ5万票の差をつけ当選、しかも無党派層の7割が山崎に票を投じた。共産党候補が獲得した11万票とあわせると、野党系と与党系の差は16万票の大差に開いたのである。
岸田政権の誕生により総選挙で自民党は踏みとどまるという楽観論は、総選挙告示以後日々刻々と薄らいでいた。この参院補選における野党の勝利は、確実に自民党の低落傾向に拍車をかけることになる。
今回の総選挙については、時間が経過するごとに各種選挙結果予測が修正され、終盤が近づく今でも与野党がそれぞれどれだけの議席を獲得するのかが未知数な状況である。稀にみる選挙予測が困難な選挙になっているわけだが、この原因は野党側にではなく与党側にある。
それはこの総選挙が、憲政史上最長を記録した第二次安倍政権において構築されたレジュームからの政権移行過程でおこなわれているからだ。
長期政権後の政権移行は、堅牢に構築された政府―党―官僚の権力ブロックの再編にあたって均衡を再構築するのが困難であり、歴史的にも次代の政権は短命に終わってきた。事実、安倍政権から移行した菅政権はわずか一年で幕を閉じることになった。
現在進行しつつある自民党の低下傾向は、有権者のひとときのきまぐれによって生じているのではない。それは構造的に規定されており、安倍政権がつくりあげたレジュームから脱却し、あらたなレジュームを構築することを失敗したことに起因している。総選挙終盤になって姿をあらわしつつあるこの自民党の構造的な危機は、総選挙後もさらに深刻化していくことになるだろう。
ではその構造的な危機とは何か。
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