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ポルノサイトをめぐる世界の潮流:パンデミック下の「セックスワーカー」

塩原俊彦 高知大学准教授

別の動き

 2021年になって、NYTが注目したポルノサイトは英国に本社を置くオンリーファンズ(OnlyFans)である。これはユーザーがコンテンツへのサブスクリプション・アクセス権(一定期間の利用権に料金を請求して、サービスへのアクセスをできるように権利)を販売できる有料会員制プラットフォームで、パンデミック下において、「セックスワーカー」と呼ばれている性を売り物としている人たちがオンリーファンズを通じてサービスを提供し、稼ぐ機会を与えたことが注目されたのである。女の子一人あたりの平均料金は月額12ドル(最低月額4.99ドル、最高月額49.99ドル)で、利用者のカードから自動的に引き落とされる。一説には、ユーザー数は1億5000万人を超えている。

 ポルノ業界は当初、制作会社がポルノビデオを数多くつくり、それを有料サイトでふんだんに視聴できるようにするサービスで利益を得てきた。ところが、いわゆるチューブサイト(盗用したポルノコンテンツを集約して無料で配信し、バナー広告や動画広告による収益を吸い上げる動画プラットフォーム)によって、大手スタジオの多くが廃業に追い込まれていく。

 この延長線上に、世界全体をネットワーク化したポーンハブやXVideosのようなほとんど無料のサイトが台頭する。ポーンハブなどは、合意のもとに撮影されたかどうか疑わしい投稿ビデオなどを「餌」にして、そのつづきを観たい者に課金するといった方法で、低コストによる巨大な利益を得られるようになる。投稿者は無償動画の広告収入、視聴者が加入しているポーンハブのプレミアムプランの料金を再生数に応じて分配する仕組みからの収入、動画のダウンロード販売などで利益を得られるようになった。

 しかし、前述したように、ポーンハブなどへの批判が高まったことで、投稿に伴う手続きが厳格化されるようにもなっている(たとえば「Pornhubのモデル認証がパスポート必須になってしまったのだ!!」を参照)。こうして、オンリーファンズへの関心が集まるようになる。NYTも2021年5月18日付で、「このサイトは性的なコンテンツで成り立っているわけではないという主張にもかかわらず、このプラットフォームはポルノの代名詞となっている。その実態は?」という、オンリーファンズに焦点を当てた記事を掲載している。さらに、8月19日付の「オンリーファンズ、性的に露骨なコンテンツを禁止すると発表」という記事が登場する。

 なお、ポルノ情報の伝播には、インターネットやソーシャルメディアなどを介する必要があるから、そうした事業を運営する会社の規制対象となる。こうした業界のポルノ関連規制をめぐっては、NSFW(Not Safe For Work)という「隠語」で語られているのだが、NSFWについてフェイスブックやユーチューブなどのソーシャルメディアがどのように扱ってきたかについては、Katrin Tiidenberg & Emily van der Nagel著Sex and Social Mediaが参考になる。

オンリーファンズ、ユーザー数は1億3000万人

 紹介した記事によると、オンリーファンズには1億3000万人以上の利用者がいる。オンリーファンズは2016年に設立され、利用者は無料でアカウントを登録することができる。ただし、支払い方法を提供しなければ投稿を見ることはできない。「無料アカウントが広く普及しているのは、請求書の情報が保存されていることで、お金を払わないファンを、お金を払う顧客に変えることが簡単にできるからだ」という。最初に無料で登録した後、衝動的にクリックするだけでお金を使い始めさせることができるというのがねらいらしい。

1)	Stas Vulkanov/shutterstock.com拡大Stas Vulkanov/shutterstock.com

 利用者は動画などを制作し、投稿している者(クリエイター)に月額料金を支払うことで、インスタグラムやティックトックには掲載できないようなきわどいイメージのフィードを見ることができる。利用者は、ダイレクトメッセージを送ったり、クリエイターに「チップ」を渡したりして、自分の性的嗜好に応じた写真や動画をオンデマンドで入手することも可能だ。

 クリエイターの側からみると、「オンリーファンズはパンデミックの間、セックスワーカーを含む200万人のクリエイターの収入源となった」面がある。同社は、「クリエイターが自分のビジネスを効果的に運営し、サイトに投稿したコンテンツを所有できるようにしたこともあり、セックスワークの民主化に貢献した」と述べているという。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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