メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

無料

極寒の冬、コロナ禍、食糧危機、子どもを売る親も……アフガニスタンに命を守る支援を

携帯のネットワークを介し、生活困窮の人々に対して最低限の生活資金を届けたい

小美野剛 ジャパン・プラットフォーム共同代表理事 CWS Japan事務局長

増える栄養失調。子どもを売る親も

 先述のように、アフガニスタンでは暖をとる燃料や食糧の備蓄があるなしが生死を分ける。それゆえ、冬が来る前に、できる限りの備えをしておく。ところが現在は、日々の食べ物にも困り、極度の栄養失調に陥る子どもが多数存在するのが実情だ。備えるどころではない。大人が食べるものを減らし、子どもに分け与えるのが当たり前になっている。

拡大紛争を逃れて避難した一家©CWS

 上の写真の一家は、紛争が激化したアフガン東部から命からがら逃げてきたが、手持ち資金が尽き、写真に写っているものが全財産だ。その中から売れるものを見つけ、買ってくれる人を探して売る毎日だ。

 日銭はわずか。その日、一番安いものを食べる。例えば、腐りかけの野菜は安くなる。この日はトマトだったというが、それだけを食べる。もちろんお腹はふくれない。空腹のまま夜を明かすという。

 別の場所では、ある母親がモスクを訪れ、子どもを引き取ってくれるよう周りに懇願したそうだ。自分では育てられないので、食べるものを与えてくれる人に引き取って欲しいとのことらしい。

 また、別の場所ではある避難民の母親が、自分の1歳半の子どもを3万アフガニー(4万円強)で売っていた。他の子どもたちも含め、家族全員がダメになってしまう状況下での苦渋の選択だったと言う。幼い子どもたちが早期婚を余儀なくされているという報告もある。

拡大カブールに留まる避難民家族©CWS

 今まで教師や警察などの職についていた人々が物乞いをする姿も見られるようになった。家族を食べさせられず、現状に耐え兼ねて自殺する人、餓死する人も出てきた。これらはすべて、現地にいる我々の仲間達が、現場で見聞きしているケースである。

 こうした窮状を前にしたある同僚は、「現場から家に帰るのに必要な金だけ財布から取り、あとの身銭はすべて置いていった」と言っていた。自分の生活も苦しいのに、人道を重んじる心が彼を駆り立てたのだろう。この同僚の目には涙が浮かんでいた。経験豊富な人道支援者でさえ、今の状況はとてつもなく厳しいのだ

確実に起きているコロナ感染。遅れる対策

 アフガニスタンで新型コロナウイルスの感染はどうなっているのか。ニュースに出てこないため、あまり知られていないが、感染拡大は確実に起きている。

 日本は10月末時点で感染者170万人強、死亡者数が1万8千人強である。死亡率は全体の単純計算で1.06%程だ。アフガニスタンは累計15万人強の感染者に対して死亡者は7千人強。死亡率は4.65%だ。また、日本では現在0.5%程度まで下がっている陽性者率は、アフガンでは20%前後で推移している。

 下のグラフは世界保健機関(WHO)のモニタリングデータだ。タリバンが政権を奪取した8月中旬の陽性者率が20~30%くらいと高く、その前にもさらに高い陽性率を示している。全体として十分な検査が実施できておらず、正確な状況を把握できていないことを示唆している。その後は検査数が激減しており、現在の状況は全くわからない。

 ちなみにワクチンを接種しているのは人口の5%ほど。人口の7割がワクチン接種を終えた日本とは雲泥の差である。

拡大グラフ 出典:世界保健機関(WHO) COVID-19 Epidemiological Bulletin, Afghanistan https://reliefweb.int/sites/reliefweb.int/files/resources/weekly-epidemiological-bulletin_w41.pdf

 この1年半の支援活動を通じて、様々な国の新型コロナの状況を見てきた経験から言えば、感染対策に注力できることは、ある意味幸せなことだと思う。アフガニスタンのような国は、コロナ以上の致死率を持つ他のリスクが多く、コロナ対策に重点をおくことができない。リスクというのは、相対的なのだ。

 単に比べるのは良くないが、対策ができる我々はきちんと対策をとり、それができない国に対しては積極的に支援することが重要ではないだろうか。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

小美野剛

小美野剛(こみの・たけし) ジャパン・プラットフォーム共同代表理事 CWS Japan事務局長

1980年生まれ。特定非営利活動法人CWS Japan事務局長及び認定NPOジャパン・プラットフォーム共同代表理事。アジア防災緊急対応ネットワーク(ADRRN)理事兼事務局長、防災・減災日本CSOネットワーク(JCC-DRR)共同事務局、支援の質とアカウンタビリティ向上ネットワーク(JQAN)代表などを兼務。アフガニスタン、パキスタン、ミャンマー、タイなどの現場を経て東日本大震災から日本の事業も開始した。同志社大卒業、ブランダイス大学大学院開発学修士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

小美野剛の記事

もっと見る