山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト
元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
結婚で「祝賀報道」は増えた。眞子さんと小室氏は新天地でどう生きていくのか
眞子さんの結婚問題に関し、この4年間、日本のメディアの報道ぶりは、当事者の眞子さんからは見れば“誹謗中傷”と思えたのかもしれない。ところが結婚後は一転して、「愛を貫いた揺るぎのない思い」への賛辞が増えている。
それで思い出したのが、英国のダイアナ元皇太子妃の場合だ。交通事故死をきっかけに、「スキャンダラスな恋多き女」から一転して、対人地雷禁止やエイズ対策に取り組む「闘士」、いや「聖女」になった。
眞子さんとダイアナ元皇太子妃。2人をめぐる評価の反転はどこから来るのか。メディアの身勝手さだけではなさそうに思える。
眞子さんの結婚問題に関する報道はすでに十分すぎるほどあるので、ここでは割愛する。ダイアナ元妃の場合は、1997年8月31日の交通事故死からすでに34年が経ち、未知の読者も多そうなので、おさらいをしてみよう。
英国の由緒ある伯爵令嬢で清純な美女だったダイアナ元妃は、周囲から祝福されて結婚し、たちまちメディアの話題をさらった。2人の男子にも恵まれ、順調に結婚生活を謳歌しているように見えたが、突然、「おとぎ話の王女さまから王子さまに見捨てられた恋多き女」に一転。英国名物のイエロー・ペーパーを中心に、メディアは競って「スキャンダラスな恋多き女」の“誹謗中傷”合戦を展開した。
そんななか、英BBCが特ダネとして報じた彼女が涙目で出演した長時間インタビュー(最近、弟のスペンサー伯爵がBBCの有名ジャーナリストにハメられたと指摘して話題を呼んだ)は、イギリスをはじめ、日本はもとより世界中で放映され、大きな反響を呼んだ。チャールズ皇太子の浮気を公けに非難すると共に、自身の不倫も告白するなどセンセーショナルな内容だったからだ。
しかし、欧州では、この単独会見は評判が良くなかった。特にフランスでは、元妃に同情するどころか非難囂々(ごうごう)だった。フランス人は自分たちの王様をギロチン台に送った結果、王室問題に関しては常に複雑な優越感があるが、この時も元妃の泣き面を容赦しなかった。
「その辺の小娘みたいに、公衆の面前で泣くな。夫の浮気問題で涙など流すな。欧州の王族の歴史を見よ、浮気や愛人問題など珍しいことではない。自分の浮気を告白するなど、言語同断。薄汚い女になりさがるな。もっと超然、毅然とした態度をとるべきだ」などなど。
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