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自民党圧勝の衆院選が示した民意のリアル~岸田政権が実績示せねば“幕間劇”か

自民党議員がつぶやいた「このままでは来年夏の参院選は危ない」の背景

曽我豪 朝日新聞編集委員(政治担当)

 衆院選投票日(10月31日)の翌日、激戦を伝えられた関東圏の小選挙区選挙で競り勝った50歳前の自民党衆院議員に会った。何とも浮かぬ顔の彼がまず口にしたのは、「このままでは来年夏の参院選は危ない」という危機感に満ちた言葉である。

衆院選で自民党議員に生じたリアリズム

 彼自身、選挙戦における若者層の政権支持の根強さや、立憲民主党と共産党の選挙協力による一部労組の離反など、自民党の優位点を実感はしつつ、とりわけ日本維新の会の候補の猛追を目の当たりにして肝を冷やしたと言い、地方対策に加えて都市部対策に本気で取り組まなければ、いずれ手痛いしっぺ返しを受けるとの思いを新たにしたという。絶対安定多数の確保という衆院選の勝利に酔い痴れて、岸田文雄政権に「万能感が出て来るのが怖い」とまで言った。

 それが、この衆院選で自民党の若手らに生じたリアリズムだったのだろう。

拡大衆院選の投開票日翌日に会見する自民党の岸田文雄総裁=2021年11月1日、東京・永田町の自民党本部

民意の底流にあるものは……

 確かに、立憲民主党との闘いにおいて、自民党は「261対96」の圧勝を収めた。だが、多くの激戦区では、実は僅差(きんさ)の勝利に過ぎなかった。維新が41議席と3倍増の勢いを見せたのは、自民党に足りない現状打破の意思と姿勢とに、有権者が惹かれた結果だったに違いない。

 さらに、自民党側では甘利明、石原伸晃、野田毅各氏ら、立憲民主党側でも小沢一郎、中村喜四郎、辻元清美各氏らが小選挙区で敗れた。単純に一括りは出来ないものの、政局を引き回したり論客で鳴らしたりした「大物」にさえ退場を迫る、世代交代や新陳代謝を求める民意の潮流は否定できまい。

 岸田政権の発足時の内閣支持率は、朝日新聞調査で45%と歴代内閣と比べて低く、“ご祝儀相場”感のなさが指摘されたが、それよりも35%に及んだ「態度保留層」の厚みこそが、注目すべき現象だったのではないか。実績をもとに審判しようとする慎重さが民意の底流にあったとすれば、前述の自民党議員の危機感も分かろうというものだ。

 つまり、岸田政権が目に見える実績を残せなければ、この衆院選の勝利など、短い“幕間(まくあい)劇”で終わりかねないのだ。

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筆者

曽我豪

曽我豪(そが・たけし) 朝日新聞編集委員(政治担当)

1962年生まれ。三重県出身。1985年、東大法卒、朝日新聞入社。熊本支局、西部本社社会部を経て89年政治部。総理番、平河ク・梶山幹事長番、野党ク・民社党担当、文部、建設・国土、労働省など担当。94年、週刊朝日。 オウム事件、阪神大震災、など。テリー伊藤氏の架空政治小説を担当(後に「永田町風雲録」として出版)。97年、政治部 金融国会で「政策新人類」を造語。2000年、月刊誌「論座」副編集長。01年 政治部 小泉政権誕生に遭遇。05年、政治部デスク。07年、編集局編集委員(政治担当)。11年、政治部長。14年、編集委員(政治担当)。15年 東大客員教授

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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