首相就任から1カ月余。「ひ弱さ」から脱却めざし独自色もじわり
2021年11月06日
新型コロナウイルスの感染対策や、安倍晋三・菅義偉・岸田文雄政権の評価を問う総選挙が終わった。結果は、自民党が議席を減らしたものの、絶対安定多数を確保。公明党との連立政権は継続することになった。一方、野党側は立憲民主党が共産党などと候補者を一本化したにもかかわらず、議席を減らし、枝野幸男代表は辞任。新たな執行部を選ぶことになった。
岸田首相は年内に景気対策を柱とする補正予算を速やかに成立させ、年明けの通常国会と夏の参院選に臨む。自民党総裁選では「ひ弱」「発信力不足」が指摘された岸田氏だが、首相就任から1カ月余。「新自由主義からの決別」や「自民党改革の断行」などを明言して独自色を発揮するなど「意外にしたたかな顔」も見せ始めている。
安倍元首相の影響力をどう抑え込むかなど難題も控えているが、地味でも静かな議論を進める岸田流がじわりと発揮されれば、「1強」に代わる新しい政治へと歯車が動くかもしれない。
この総選挙の特徴を表したのは、選挙戦最終日10月30日の岸田首相の演説場所だ。安倍元首相の場合、衆参両院の選挙で最終日の演説場所は東京・秋葉原だった。安倍氏を支持する保守系グループが大挙して集まり、気勢を上げるなか、安倍政治を批判する人々も集まり、騒然とすることが多かった場所である。
岸田首相には、秋葉原は安倍政治やアベノミクスの代名詞に映るという思いがあったのだろう。だから、最後の演説場所は秋葉原を避けて、JR大井町駅前を選んだ。「安倍氏とは違う政治をする」という岸田氏のこだわりだった。
選挙中の街頭演説でも、岸田首相は野党批判を抑え、コロナ対策などを諄々(じゅんじゅん)と説く場面が多かった。野党支持者に対して、「あんな人たちに負けるわけにいかない」と力説した安倍氏との違いが際立った。
選挙の結果は、自民党(276→261)▽立憲民主(110→96)▽維新の会(11→41)▽公明党(29→32)▽国民民主党(8→11)▽共産党(12→10)▽れいわ新選組(1→3)▽社民党(1→1)などとなった。
自民党は、菅政権下の解散・総選挙なら70議席減もあり得るという予測が出ていたが、①総裁選で変化をアピール、②岸田首相のソフト路線で無党派の支持を回復、③選挙戦で「共産党と組んだ立憲民主党」と野党陣営を攻撃――などの理由もあって、15議席減で踏みとどまった。
ただ、一部の地域では逆風にさらされた。甘利明幹事長が選挙区で敗退し辞任。派閥領袖の石原伸晃元幹事長は選挙区、比例区とも落選し、現職閣僚の若宮健嗣万博担当相やベテランの桜田義孝元五輪相らも選挙区で立憲民主党の候補に敗れた。
ここで、再び岸田流のしたたかさが発揮される。甘利氏の後任幹事長に茂木敏充外相を起用したのだ。
甘利氏は総裁選で安倍氏や麻生太郎副総裁との連絡役を務め、岸田氏の当選に貢献した。茂木氏も甘利氏同様、安倍、麻生両氏に近い。岸田首相と安倍・麻生両氏との「パイプ役」になると自民党内では言われている。だが、事はそう単純ではない。
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