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二大政党制は確立できるのか~それを築く道筋を今回の総選挙から考える

単なる選挙戦術の野党共闘は再考を。有為な新人材は将来への基盤となる

登 誠一郎 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

拡大国会議事堂
 日本に最も望ましい政治形態は、有権者に政策の違いがわかりやすくて政権の選択がしやすく、かつ、安定的な政権運営が可能な二大政党制であると確信する。しかし、現在の野党はその一角を構える実力を有しているとは考え難い。筆者は、今回総選挙において、政権交代はあり得ないものの、野党から若くて有能な政治家が多く誕生し、将来への基盤を構築することが望ましいと考えていた。このような観点からボランティアとしてある候補者の選挙を手伝ったのだが、その経験から総選挙について感じたことと、日本の政党制や選挙制度についての考えを述べてみたい。

9年間の支配体制への不満→結果は自民の絶対安定多数

拡大主催した「桜を見る会」であいさつする安倍晋三首相(中央)=2019年4月13日、東京・新宿御苑
 民主主義社会における政党制の形態としては、実質的一党支配制、二大政党制並びに多数政党制に大別されるが、2012年の第2次安倍内閣成立以降、菅内閣までの約9年間は、自公連立政権が圧倒的な優位を保ち、実質的には自由民主党の一党支配体制が継続した。

 この政権は、日本の対外関係の安定と強化、安全保障体制の整備など一定の成果を上げたと思われるが、他方、政権の長期化によるおごりと世論軽視の態度を増大させ、多くの国民の不満は高まって、内閣支持率は菅政権末期においては20%そこそこという危機的レベルまで下落し、その後の岸田政権誕生後も低迷を続けた。

 その中で今回行われた総選挙において、一部野党は「すわ、政権交代選挙」と色めき立ったが、結果は自由民主党が議席数は減少させたものの、単独での絶対的安定多数(261議席)を確保する一方、立憲民主党は大方の想定に反して議席を減らす結果に終わった。

拡大自民党の開票センターで取材に応じる岸田文雄総裁=2021年10月31日午後11時14分、東京都千代田区
拡大立憲民主党の開票センターで記者会見する枝野幸男代表=2021年10月31日午後11時35分、東京都港区

野党共闘は実質的成果なし 立憲と共産の大敗北

 今回の選挙で野党4党が、鳴り物入りで全国の計217の選挙区で候補者を一本化した野党共闘は、所期の成果を上げることができなかった。

 数字で見ると、立憲が勝利したのは57名で、公示前から9名増えたが、比例区では62名から39名へと激減した結果、差し引き14名の減少となった。他の野党4党は共産党以外は減少しておらず、今回の野党共闘は、主導した立憲と共産の大敗北と言わざるを得ない。

拡大市民連合と政策合意を交わし、記念撮影する野党4党首。(右から)れいわ新選組の山本太郎代表、立憲民主党の枝野幸男代表、共産党の志位和夫委員長、社民党の福島瑞穂党首=2021年9月8日、国会内
 立憲も共産も選挙区における「成果」を誇示しているが、前回の選挙で野党票の合計(維新を除く)が自民票を上回っていた幾つかの選挙区では、「足し算」通りにはならずに今回敗北した。また前回は複数の野党候補が出馬する中で勝利したのに対し、今回は野党統一候補を立てたにもかかわらず敗れた選挙区もある。

 この結果、野党共闘の勝率は28%に過ぎず、小選挙区において幅広く勝利につながったとは到底言えない。

拡大東京8区で自民党の石原伸晃氏を破った吉田晴美氏(下列左から2人目)。当選確実の報道を受け、支援者と喜んだ=2021年10月31日午後8時49分、東京都杉並区
 また野党が大激戦を制した選挙区においても、必ずしも野党共闘が勝利の主要因ではない場合もある。

 例えば東京8区で自民党の派閥の領袖(石原伸晃氏)を相手に戦った野党統一候補者(吉田晴美氏)は、前回の選挙において共産党候補者が同区で得た得票数をはるかに上回る大差で勝利したのであるから、野党共闘の恩恵を受けたというよりも、日常の地道な努力(例えば、パソコンに不慣れな飲食店主の給付金申請を手伝うなど)が結実した勝利と言えよう。

立憲民主の比例区惨敗の要因

 立憲民主党が今回惨敗した比例区については、全国での獲得票数が、前回の選挙で立憲と希望の党の合計票の半分余りの1150万票に過ぎなかったが、これは野党共闘の負の部分の表われである。

 具体的には二つの要素に分けられる。一点目は、共産党との連携を嫌った多くの立憲支持者の票が、維新、国民、れいわなどに流れたこと、二点目は、共闘政党が小選挙区の候補者をおろす代償として、立憲の候補者自身が、「比例では他の共闘政党への投票を要請した」ことである。

 具体的な例として、東京7区を見てみたい。この区の野党統一候補(立憲民主党公認)は、小選挙区で前回よりも7千票多い12万4千票を得たが、立憲がこの選挙区で得た比例票はその半数以下の5万7千票に過ぎない。立憲は、この選挙区の比例選挙では、獲得した票数以上の規模の票を他党に奪われたことになる。

 全国的に見ても、立憲の比例区得票数は、小選挙区得票数より570万票も少なく、「立憲票の比例からの逃げ出し」現象が、野党共闘の行われた全国のいたるところで起きていたのである。

 以上の諸点を踏まえると、今後、二大政党制を目指すのであれば、今回のような形の、単なる選挙戦術としての野党共闘は再考すべきではなかろうか。

拡大かつて、自民党に対抗する政治勢力を目ざした新進党の結党大会。5党派などの衆参議員214人が参加。初代党首の海部俊樹氏は政権交代へ決意を表明した=1994年12月10日、横浜市

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筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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