藤原秀人(ふじわら・ひでひと) フリージャーナリスト
元朝日新聞記者。外報部員、香港特派員、北京特派員、論説委員などを経て、2004年から2008年まで中国総局長。その後、中国・アジア担当の編集委員、新潟総局長などを経て、2019年8月退社。2000年から1年間、ハーバード大学国際問題研究所客員研究員。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
指導者同士の信頼づくりは難しい。米中トップの個人的間柄は窮地に生きるか?
バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が11月15日、オンライン形式で会談した。両氏は副大統領と国家副主席という立場で会って以来、10年の知己という間柄だ。
中国が共産党独裁で“富国強兵”を続けるなかで、米中関係は安全保障や経済など様々な面で激しく対立している。それは会談にも影を落とし、終始和気あいあいとはいかなかった。会談の結果も地味だった。
それでも、日本の首脳外交では希少な、バイデン、習両氏の「長い関係」は、会談で大統領自身が指摘した「競争が衝突へと発展しないためのガードレール」の強固なパーツにはなりうるだろう。本稿では、米中トップの個人的関係は、二国の関係にどんな影響を及ぼすかについて、あらためて考えてみたい。
「今日、私たちは初めてオンラインで会議をする。当然直接の対面には及ばないが、悪くはない」と切り出した習氏は、「老朋友(ラオポンヨウ)に会えてとてもうれしい」と笑顔を見せて話した。「老朋友」は古くからの友人の意味だが、一度会っただけでも使う軽さもある。
一方、大統領は「私たち二人はとても長い時間話してきた」と応じた。しかし、「友達」とは言わなかった。
トランプ前大統領が、クリントン政権以来の対中関与政策を捨てて強硬姿勢に転じたのを、バイデン氏は引き継いだ。異形の発展を続ける中国への反感や警戒感は、与野党だけでなく、国民の多くにも共有されている。
バイデン氏は4月の施政方針演説で習氏を「専制主義者」と呼んだ。またこの夏に新型コロナウィルスの発生源調査をめぐり、習氏との米中協力を問われた際には、「私たちはよく知っているが、古い友達でない」と言い切った。それもこれも、中国に厳しい米世論が背景にある。
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?