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「野党共闘は失敗」に感じる違和感~立憲民主党が勝てなかった真の理由とは

野党共闘の成功した部分と失敗した部分の正しい評価・反省・修正が必要

米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

活動の質~共通政策にみるプラス・マイナス

 活動の質(Q)は多様な概念ですが、「主要な争点として、何を重点的に訴えるか」は、その重要な要素の一つであると思います。

 私は前述の通り、3~6ヵ月に1回の頻度で世論調査を行っていましたが、この中で尋ねた「投票において重視する論点」の推移は、次のグラフ2の通りでした(関心が3%以下の論点はグラフに示していません。また、あえて聞いていない論点もあります)。

拡大グラフ2

 2021年前半は有権者の関心は何と言っても新型コロナ対策であり、私も新型コロナ対策にフォーカスした街頭演説を行いました。街頭演説は聴衆の反応を直に感じられるものですが、この時期は、新型コロナ対策の演説に聴衆が引き込まれているのが実感でき、時には「何とかしてくれよ!」という掛け声をいただくこともありました。

 しかし、2021年の夏以降、徐々に感染者が落ち着きだすと、聴衆の反応が変わりだしました。調査上も新型コロナ対策への関心は徐々に低下し、2021年の8月以降は、経済対策が、有権者が投票において重視する争点のトップとなりました。これに応じて、演説の内容を新型コロナから経済対策に変更したところ、立ち止まって聞き入ってくれる層が微妙に変わりつつも、聴衆が演説に引き込まれている感覚が戻ってきました。

 なお、原発問題(原子力政策)は、私にとっても新潟5区の有権者にとっても極めて重要な問題ですが、今回の総選挙では、立候補した3候補が全員反対、ないしは慎重な姿勢であったこともあり、争点としての関心が高いとはいえないと世論調査から分かっていたので、私もほぼ常に演説の最後で触れはしましたが、訴えの中心として打ち出しはしませんでした。また、いわゆる「森・加計・桜」問題(政治倫理)についても、極めて重要な問題だとは思いますが、世論調査からは有権者の関心はさほど高くないと考えられたため、演説ではほとんど取り上げませんでした。

 私は、野党共闘で「共通政策」を作ったことは必要だったし、良かったと思うのですが、そこに過度に縛られると、上述のようにして「いま有権者がもっとも関心がある争点」を常時探り続け、機敏に対応するのが難しくなるという副作用がありえ、注意が必要だと思います。

 さらに、私の陣営では、可能な限り綺麗なビラ、ポスター、旗、街宣車を作り、街頭演説の場では可能な限り手際よく綺麗に旗を立てることに注力しました。この手の「技術的な活動の質(Q)」の要素は、基本的には野党共闘路線の採否とは無関係ですが、複数の政党・団体が選挙に携わる野党共闘では、意識していないと、関係者の調整にエネルギーを消費して、そういった所に注意が向かなくなってしまう副作用がありえます。

 技術的な活動の質(Q)の要素については、資金力のある自民党陣営が勝っている場合が少なくありませんし、私がかつて所属し、今回の選挙で躍進を遂げた日本維新の会が、この要素について優れた面があることは否めません。野党共闘路線をとる、とらないに関わらず、候補者・陣営は技術的な活動の質(Q)の要素にも、常に注意を払い続けることが必要だと思います。

拡大衆院選前に「市民連合」と政策合意した、(左から)社民党の福島瑞穂党首、共産党の志位和夫委員長、立憲民主党の枝野幸男代表、れいわ新選組の山本太郎代表=2021年9月8日、国会内

活動の露出~SNS時代で重要な要素に

 活動の露出(E)は、いままではあまり語られない要素でしたが、マスコミへの露出のほかにも、自らがSNSで「露出」を作れるようになった昨今、非常に重要な要素になっていると思います。

 今回の総選挙で新潟5区は、元知事同士+元市長対決と言う世間の耳目を集める構図であった事に加え、私の妻が著名人ということもあり、何もしなくてもマスコミに再三取り上げられましたので、私の陣営ではまず、可能な限りマスコミに協力し、より多く、より良く露出するように努めました。

 また、選挙戦の途中で、街頭演説で「候補者、候補者の妻と写真を撮ることを希望する聴衆が多い」という事実に気が付いてからは、聴衆の要望に応えるためであると同時に、「撮影された写真は高い確率で、SNSで拡散され、何より活動の露出(E)を向上させることになる」と考え、住宅街で5~10分のゲリラ街宣を多数おこなうという従来の方法から、「多人数が集まりやすく、写真撮影の順番待ちで混乱の生じない、スーパーの駐車場横」で、「写真撮影を希望する全員が撮影できる余裕を持った時間間隔」での街頭演説に切り替えました。くわえて、政治活動や選挙活動の写真や動画に、可能な限り分かりやすい解説をつけてSNSで拡散する事にも注力しました。

 活動の露出(E)という要素は、野党共闘路線の採否とは基本的に無関係ですが、現代の選挙においては、各陣営がよくよく意識して対応すべきことだと思います。

小選挙区で勝つための三つの課題

 以上、私自身が戦った新潟5区の選挙を題材に、今回の衆院選を振り返ると、以下の通りとなります。

 第一に、活動基盤の量(M)で最初から不利に立たずにすんだという点で、野党共闘の効果は絶大でした。次回の参院選・衆院選において、より多くの小選挙区での勝利を積み重ねようとするのであれば、野党共闘は必須であると思います。

 第二に、野党共闘には、活動の時間(L)を短くしたり、野党共闘の主張に縛られて争点を機動的に変えられなくなったりすることや、調整すべき関係者が増えることなどで活動の質(Q)を下げかねないという短所も存在しました。しかし、活動基盤の量(M)で圧倒的な差をつけられた場合と異なり、これらの副作用は、それぞれの政党や陣営で対処できる問題であり、その努力が求められると思います。

 第三に、活動の露出(E)については、野党共闘路線の採否とは無関係ですが、マスコミへの露出に加えて、自ら露出を作ることができるSNSと言う手法が使えるようになっている現在、各政党・各陣営で意識的な対応が必要だと思われます。

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 衆議院議員・弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2022年衆院選に当選(新潟5区)。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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