政権交代への道筋を描くのか、自民党に弾き返され政権交代は遠のくのか。まさに分岐点
2021年12月02日
立憲民主党は枝野幸男氏に代わる新代表に泉健太氏を選んだ。泉氏は、逢坂誠二、小川淳也、西村智奈美各氏との代表選を経て、逢坂氏との決選投票を制した。
泉氏は役員人事に着手。逢坂氏を代表代行、西村氏を幹事長、小川氏を政調会長にそれぞれ起用し、挙党態勢を整えた。12月6日からは臨時国会、年明けには通常国会が控えており、さっそく泉立憲の力量が試される。
来夏の参院選で議席を増やし、政権交代への道筋を描くのか。党内結束ができないまま、岸田文雄首相率いる自民党に弾き返され政権交代は遠のくのか。今まさにその分岐点にある。泉立憲の行方は、日本政治の将来を大きく左右する。
泉代表の登場で、自民党と立憲民主党の対決構図が変わるだろう。自民党の右派・保守派に位置づけられる安倍晋三元首相元首相は「悪夢の民主党政権」と繰り返し、立憲への攻撃も激しかった。後継の菅義偉前首相は、安倍氏ほどではないものの、立憲への批判はやめなかった。
これに対して、岸田首相は党内リベラル派の宏池会出身で、野党批判は滅多に口にしない。政策的にも安倍氏らの新自由主義的風潮とは距離を置いている。
一方、立憲内で左派色が強かった枝野氏は、安倍、菅政治批判の急先鋒だった。それに対して泉代表は「これまでの立憲は批判ばかりと受け止められてきた」と訴えている。今後は、政府・与党の不祥事の追及などは続けつつ、政策提案を強化していく方針だ。
安倍氏対枝野氏が遠くからの非難合戦とすれば、岸田氏対泉氏は理念・政策の近い者同士の「接近戦」になる可能性がある。新型コロナウイルス対策や経済再生、米中対立の中での日本外交のあり方などについて、岸田政権との協議も進みそうだ。
とりわけコロナ対策では、南アフリカで発見された新しい変異株(オミクロン株)の感染拡大が懸念され、水際対策や検査体制・医療体制の強化策などの具体論が求められている。経済政策でも、富裕層増税や生活困窮者対策などで独自の対策を打ち出した上で、政府・与党との接点をめざす必要がある。
もっとも、この「接近戦」には危うさも伴う。政権側は妥協してでも立憲の取り込みを図るだろうし、立憲の内部からは「野党らしさをなくす」という不満も募るだろう。野党が政権を批判することは当然だが、問題は「批判ばかりと受け止められる」ことだろう。
筋の通った批判をする一方で、建設的な提案も進め、時には政府・与党との合意もする。立憲が政権をめざすなら、批判と妥協のバランスが欠かせない。バランスの取れた接近戦ができるかどうか。泉代表の政治手腕がさっそく試される。
政治を伝えるメディア側も、小泉純一郎政権の「劇場型」政治や安倍氏対枝野氏のような「全面対決型」になれてきたため、政策論議中心の「接近戦」は「退屈」と映るに違いない。派手な動きに飛びつくのではなく、政策の具体的な中身を紹介し、じっくりと問題点を指摘する。メディアにも変化が求められている。
岸田政権との間合いに加え、泉代表が抱える課題は多い。まず、立憲の足腰の強化と共産党との関係を考えてみよう。
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