山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト
元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
不幸や悪の根源は増加するイスラム系の難民や移民と主張。若年層を中心に支持拡大
フランスの次期大統領選(2022年4月、普通選挙、2回投票制=1回投票で過半数獲得者がいない場合、上位2人で2週間後に決選投票)を前に、極右もどきが跋扈(ばっこ)している。若年層を中心に支持率を伸ばしているエリック・ゼムール(63)だ。
「自分は人種差別者」ではないと言明するゼムール氏だが、同時に「フランス人の名前の22%はイスラム系の名前」と指摘、暗にイスラム系移民の増加を非難するなど、矛盾した発言が多い。要するに、単なるポピュリスト、アジテーターなのだが、本物の「極右」思想家より、ある意味ではフランス社会の病根の深さを象徴していると言える。
最新の世論調査(週刊誌『ヌーベル・オプス』12月5日電子版発表)によると、ゼムールの支持率はマクロン大統領(正式に出馬宣言はしていない)25%に次いで高い17%。極右政党・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン党首は15%、右派政党・共和党の公認候補、ヴァレリー・ペクレルと極左政党「服従しないフランス」のリーダー、メランショが11%だ。
一方で、2回目の決選投票にはマクロンとペクレスが進出し、ペクレスが52%、マクロンが48%でペクレスが初の女性大統領に就任(週刊誌『レクスプレス』12月7日の電子版)するという調査結果もあり、世論は極めて流動的だ。