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フランス大統領選を前に支持を伸ばす「極右もどき」ゼムールとは何者か

不幸や悪の根源は増加するイスラム系の難民や移民と主張。若年層を中心に支持拡大

山口 昌子 在仏ジャーナリスト

自らをドゴール将軍になぞらえた出馬表明

 いずれにせよ、いま話題集中なのがゼムールだ。パリ郊外生まれのユダヤ系。右派系の主要紙『フィガロ』の元記者。討論専門のテレビで過激な極右的発言で名を上げ、この夏ごろから、大統領選への出馬が取り沙汰されていた。集会を仏各地で開催し、失業率、治安悪化を背景に、全ての不幸や悪の根源は増加の一途のイスラム系の難民や移民と指摘し、支持を広げていた。

 正式の出馬表明は11月30日に録画ビデオテープを流して行った。1週間前に録画したというビデオは、ドゴール将軍が1940年6月18日に亡命先のロンドンの『BBC』のスタジオから放送した有名なレジスタンの「呼びかけ」のシーンを模したもの。「フランス人がフランス人であり続けるために立候補する」と宣言し、第二次世界大戦でナチに占領され、事実上の敗戦国だったフランスを勝利国に導いたドゴール将軍に自分をなぞらえた。

 普通の神経の持ち主なら、フランス人が左右の党派を超えて尊敬する「救国の志士」に自分を擬するというような破廉恥は避ける。ドゴール将軍はナチの全体主義、ユダヤ人殲滅の人種差別に反対し、フランス共和国の国是「自由、平等、博愛(連帯)」を死守した英雄だ。自分が人種差別主義者でないことをアピールしたつもりなのだろうか。

若者がサッカーのサポート並みの応援

拡大パリ郊外ビルパントで開いた集会で演説するゼムール氏=2021年12月5日

 12月5日に開催した初の集会は、パリ郊外ヴィルパントの大展示会場に満員の約2万人の支持者を集めて行われた。大半は10~20代の若者。演台の後方にも約50人の若者集団が並んで座り、拍手をしたり、三色旗を振ったり、立ち上がって叫んだりと、サッカーのサポート並みの応援を展開した。

 演説では、「自分は人種差別者ではない」「ファシストではない」と言いながら、明らかにイスラム教徒を対象にした差別的発言が相次いだ。「イスラム系の名前が22%(多い)」の意味するところは、フランスの国籍法の基本が生地主義であることへの批判だ。フランスでは両親が外国人でも、フランスで生まれた子供はフランス人だ。つまり、イスラム系の2世や3世が増えていることへの痛烈な批判なのだ。

 公約も、「生地主義廃止」「移民ゼロ」「国籍取得に制限」「不法移民の強制送還」「(不法移民や外国人が無料で治療などが受けられる)寛容な社会モデルの廃止」「北大西洋条約機構(NATO)指揮からの離脱」など右派色が濃い。こうした問題を、「国民投票にかける」と付け足したが、どれもが、高失業率や治安悪化に悩まされ、その元凶が移民の増加にあると考えているフランス国民にとっては耳当たりの良い公約だ。

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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト

元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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