伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業
愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国カルチャー──隣人の素顔と現在』(集英社新書)、『韓国 現地からの報告──セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)など、訳書に『搾取都市、ソウル──韓国最底辺住宅街の人びと』(イ・ヘミ著、筑摩書房)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
韓国の疾病管理本部の発表によれば、12月7日の陽性者数は7175名、過去最高となった。韓国の1日の陽性者数は12月に入り初めて5000人を突破、1カ月前の11月初めまでは最高でも2000人前後だったので、この1カ月で陽性者が急増したのは明らかである。
ただ同じく過去最高を更新し続けている欧州などに比べると、数字的には感染爆発といえるほどの規模ではないともいえる。例えばかつての「新型コロナ対策の優等生」ドイツの場合は、11月24日には7万9051人を記録したという。
ドイツに限らず欧州の国々はどこも大変で、それに比べれば韓国はまだまだ大丈夫のようにも見える。実際のところ韓国政府の当局者は以前には「1日7000~1万人までは大丈夫」という発言を繰り返していた。その理由は「ワクチン接種目標が予定どおり完了したから」(10月23日に目標である国民の70%接種を達成)。ところが今はそんなことを言っている場合ではなくなった。陽性者数はともかく、重症者・死亡者が当初の想定以上に多くなってしまったからだ。
陽性者の増加にともない重症者数も連日「過去最高」を更新しており、12月7日は「840人」と発表されている。死亡者数も11月22日以降は連日30人を超えており(12月3日は過去最高の70名)、その中には自宅待機中に亡くなった方もいる。病床逼迫をなんとかするために、韓国政府は「軽症者は原則として自宅治療」という方針転換を行ったが、症状が急変することもあり、こんどは在宅者への治療体制の構築が急務となっている。ソウル首都圏での重症患者の病床使用率は数字こそ80%台となっているが、病床があっても医療スタッフがいなければ回せない。そのため首都圏の患者を、まだ余裕がある他地域に移送することも行われている。
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