メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

韓国で「過去最高」を更新するコロナ感染、混迷する対策の行方は?

伊東順子 フリーライター・翻訳業

医療現場の悲鳴

ソウル駅近くで2021年11月30日、新型コロナウイルスの検査を待つ長い列ができた=東亜日報提供拡大ソウル駅の近くで新型コロナウイルスの検査を待つ列=2021年11月30日、東亜日報提供

 「こんな重症患者がどうしてここまで運ばれてきたのかと……」(12月3日付「京郷新聞」、「病床増やすなら看護師も増やして」)

 政府は各病院に「コロナ用の病床を増やすように」という指示を出しているが、この記事にある現場の声は悲痛である。

 今、韓国の報道を見ていると、日本の夏のあの悪夢が蘇ってくる。オリンピックが終わった8月の中旬以降、全国で日に2万人を超える陽性者数が発表されていた。検査は全く足りず、たとえば当時の東京都では陽性率が20%を超えていた(ちなみに12月現在では0.3%ほど)。さらにピーク時には重症者数も全国で2000名以上となり、「救急車を呼んでも来ない」、「来ても行き場がない」、「待機中に亡くなる人もいる」……、連日の報道に人々は恐怖した。今も日本人の多くはあの時のトラウマがあるのだと思う。日々の陽性者数が全国で100人台になっても警戒を緩めない人は多い。

 あのさなか、8月中旬に私は日本から韓国に移動した。ちょうど韓国が「ワクチンパスポート」で入国時の隔離免除を開始したためそれを利用したのだが、その時の韓国の防疫体制はとてもスマートだった。規制こそ厳しかったが、少なくとも検査体制は盤石であり、医療につながれないという不安もなかった。正直、韓国に到着してホッとした。それが今はどうなってしまったのだろうか?

 「毎日毎日40人近くの人が亡くなるって、恐ろしいことです。私は年寄りなので、ものすごく怖いです。政府が日常生活への復帰を宣言したせいで、若者たちは街にあふれていますが、私は不安でたまりません」

 別件でインタビューした会社社長は

・・・ログインして読む
(残り:約3694文字/本文:約5221文字)


筆者

伊東順子

伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業

愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国カルチャー──隣人の素顔と現在』(集英社新書)、『韓国 現地からの報告──セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)など、訳書に『搾取都市、ソウル──韓国最底辺住宅街の人びと』(イ・ヘミ著、筑摩書房)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

伊東順子の記事

もっと見る