伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業
愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国カルチャー──隣人の素顔と現在』(集英社新書)、『韓国 現地からの報告──セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)など、訳書に『搾取都市、ソウル──韓国最底辺住宅街の人びと』(イ・ヘミ著、筑摩書房)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「こんな重症患者がどうしてここまで運ばれてきたのかと……」(12月3日付「京郷新聞」、「病床増やすなら看護師も増やして」)
政府は各病院に「コロナ用の病床を増やすように」という指示を出しているが、この記事にある現場の声は悲痛である。
今、韓国の報道を見ていると、日本の夏のあの悪夢が蘇ってくる。オリンピックが終わった8月の中旬以降、全国で日に2万人を超える陽性者数が発表されていた。検査は全く足りず、たとえば当時の東京都では陽性率が20%を超えていた(ちなみに12月現在では0.3%ほど)。さらにピーク時には重症者数も全国で2000名以上となり、「救急車を呼んでも来ない」、「来ても行き場がない」、「待機中に亡くなる人もいる」……、連日の報道に人々は恐怖した。今も日本人の多くはあの時のトラウマがあるのだと思う。日々の陽性者数が全国で100人台になっても警戒を緩めない人は多い。
あのさなか、8月中旬に私は日本から韓国に移動した。ちょうど韓国が「ワクチンパスポート」で入国時の隔離免除を開始したためそれを利用したのだが、その時の韓国の防疫体制はとてもスマートだった。規制こそ厳しかったが、少なくとも検査体制は盤石であり、医療につながれないという不安もなかった。正直、韓国に到着してホッとした。それが今はどうなってしまったのだろうか?
「毎日毎日40人近くの人が亡くなるって、恐ろしいことです。私は年寄りなので、ものすごく怖いです。政府が日常生活への復帰を宣言したせいで、若者たちは街にあふれていますが、私は不安でたまりません」
別件でインタビューした会社社長は