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北京五輪の「外交的ボイコット」を不必要とするために~日本政府はどう対応すべきか

オリンピックの政治利用は避けるため、五輪憲章と歴史に学ぼう

登 誠一郎 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

米政府は抑制的対応、「外交的ボイコット」とは使わず

 確かに、現在、新疆ウイグル自治区で見られる人権侵害は国際的に非難されるべきものであり、国際社会が一致して中国に対して政策の変更を要求すべきものであるが、1979年のソ連のアフガニスタン侵攻のような国際政治の根幹を揺るがす深刻な事態とは異なるので、各国とも冷静な対応が求められる。

 その観点から、米国が、選手団の派遣中止という決定的な手段ではなく、政府関係者の派遣中止という穏やかな措置を発表したことは、冷静な判断に基づく抑制的な対応と評価できる。因みに、バイデン大統領もホワイトハウスの報道官も「外交的ボイコット」という表現は一度も使用していない。

拡大バイデン米大統領=2021年11月23日、ホワイトハウス

各国メディアが使用し中国が反発

 それにも拘わらず、この発表を報じた米国および世界のメディアは、前述のペロシ発言に影響を受けたのか、一斉に米国政府による外交的ボイコットと発信した。これが中国を必要以上に刺激して、「断固たる対抗措置をとる」などの反発を招いている。また中国外務省の報道官は、「米国要人の不在は五輪の成否に関係ない、彼らは招待すらされていない。」とうそぶいている。

 確かに今回の米国の発表は、中国政府が主要国首脳に対して、開会式などへの出席のための訪中を招待するのに先駆けて行われた。即ち、米国は先手を打ったのである。米国の意図は勿論、ウイグルや香港の人権問題に対する抗議のメッセージを中国側に伝えたかったのであるが、そうであれば、ホワイトハウス報道官の公式記者会見ではなく、文書によるプレス・リリースやメディアへのリークなど、ローキーで行うことにより、必要以上の注目を集めない方法が取れなかったものかと考える。

拡大北京冬季五輪の聖火歓迎式典。ランタンに入れた聖火が到着した=2021年10月20日、北京

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筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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