世界では中・ロと、国内ではトランプ前大統領と抗争する政治的苦境をどう克服するか
2021年12月16日
バイデン米大統領が12月9、10の両日、111の国・地域のリーダーを招待してオンライン形式の「民主主義サミット」を開催した。冒頭バイデン氏は、専制主義国家が影響力を拡大しようとしていることに強い危機感を示し、「民主主義が継続的で警戒するべき挑戦に直面している」と強く警告した。
かねてからバイデン氏は、現在の世界が民主主義体制の国と専制主義体制の国に分断され、民主主義的指導者と専制主義的指導者との間に深刻な対立状況が生じていると憂慮していた。そして、「専制主義国家」と位置づける中国、ロシアの力まかせの進撃によって、民主主義が追い詰められ、退潮の危機に瀕しているとの認識を示していた。
そのため、昨年の大統領選において、初の「民主主義サミット」の開催を公約に挙げ、今回実現にこぎつけた。しかし、2日間の日程を終えて閉幕したこのサミットは、結果的に「やらないほうがまし」というような盛り上がりに欠けたものになった。
なぜ、そうなってしまったのか。
原因として考えられるのは、まず「開催テーマ」、そして「参加国の選別」に無理があったからだろう。
共産主義国家やそれを経験した国にとっては、「人民民主主義」や「人民共和国」はすでに言い古されたこと。米国流の民主主義とは異なる、中国流やその他の国なりの民主主義が存在するということは、多くの人が感じているだろう。
その中国は、米国主催のサミットに合わせ、北京と世界各国をオンラインでつないで民主主義について議論する国際フォーラムをぶつけてきた。中国側の出席者の間には「米国式の民主主義はすでに問題解決の能力を失っている」という声もあったという。米国にしても「民主主義にはいろいろな形態がある」と言われれば、真っ向から否定はできないのではないか。
サミットのテーマは、(1)権威主義に対する防衛(2)汚職への対応と戦い(3)人権促進――の三つだったという。ならば、「自由サミット」や「人権サミット」という名称のほうがよかったのではないか。そうすれば、「専制主義国家」が易々(やすやす)と同じテーマを掲げることはできなかったであろう。
今回、総じて感じるのは、米国の準備不足だ。その結果、基本や大筋があいまいになったこと自体が、世界各国や国際世論を幻滅させてしまう。
さて、今回のサミット運営の粗雑さは、特に参加国の選別の不明瞭さに表れている。肝心の“選別基準”が示されていないので、招待された国も除外された国もすっきりしない。
たとえば、NATO(北大西洋条約機構)の加盟国として米国の同盟国であるトルコ、ハンガリーは除外された。やはり除外されたシンガポールやベトナムは困惑。逆に招待されたインドやフィリピンにも異論があるだろう。
そもそも、開催テーマや参加資格が不明瞭だとすれば、会議で行われる議論が盛り上がらず、成果の影響力も大きく減じられるのは致し方ない。
それにしても、なぜこんなことになったのか。
79歳と高齢のバイデン大統領の判断力が鈍ったと受け取る向きもあるだろう。しかし、最大の原因は、バイデン氏が今回のサミットを、来年夏の米国中間選挙に向けて、民主党の勢いを加速する絶好の機会と考えていたからではないかと思う。
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