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空振りに終わった「民主主義サミット」 バイデン大統領の「二正面作戦」に難あり

世界では中・ロと、国内ではトランプ前大統領と抗争する政治的苦境をどう克服するか

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

 バイデン米大統領が12月9、10の両日、111の国・地域のリーダーを招待してオンライン形式の「民主主義サミット」を開催した。冒頭バイデン氏は、専制主義国家が影響力を拡大しようとしていることに強い危機感を示し、「民主主義が継続的で警戒するべき挑戦に直面している」と強く警告した。

「やらないほうがまし」の低調さ

 かねてからバイデン氏は、現在の世界が民主主義体制の国と専制主義体制の国に分断され、民主主義的指導者と専制主義的指導者との間に深刻な対立状況が生じていると憂慮していた。そして、「専制主義国家」と位置づける中国、ロシアの力まかせの進撃によって、民主主義が追い詰められ、退潮の危機に瀕しているとの認識を示していた。

 そのため、昨年の大統領選において、初の「民主主義サミット」の開催を公約に挙げ、今回実現にこぎつけた。しかし、2日間の日程を終えて閉幕したこのサミットは、結果的に「やらないほうがまし」というような盛り上がりに欠けたものになった。

 なぜ、そうなってしまったのか。

 原因として考えられるのは、まず「開催テーマ」、そして「参加国の選別」に無理があったからだろう。

拡大オンライン形式で開かれた「民主主義サミット」を主催するバイデン米大統領=2021年12月9日、ワシントン、AP

「民主主義サミット」という名称でよかったのか

 共産主義国家やそれを経験した国にとっては、「人民民主主義」や「人民共和国」はすでに言い古されたこと。米国流の民主主義とは異なる、中国流やその他の国なりの民主主義が存在するということは、多くの人が感じているだろう。

 その中国は、米国主催のサミットに合わせ、北京と世界各国をオンラインでつないで民主主義について議論する国際フォーラムをぶつけてきた。中国側の出席者の間には「米国式の民主主義はすでに問題解決の能力を失っている」という声もあったという。米国にしても「民主主義にはいろいろな形態がある」と言われれば、真っ向から否定はできないのではないか。

 サミットのテーマは、(1)権威主義に対する防衛(2)汚職への対応と戦い(3)人権促進――の三つだったという。ならば、「自由サミット」や「人権サミット」という名称のほうがよかったのではないか。そうすれば、「専制主義国家」が易々(やすやす)と同じテーマを掲げることはできなかったであろう。

 今回、総じて感じるのは、米国の準備不足だ。その結果、基本や大筋があいまいになったこと自体が、世界各国や国際世論を幻滅させてしまう。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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