高野 弦(たかの・ゆづる) 朝日新聞社前ベルリン支局長
1966年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日新聞社に入社。宇都宮、浦和支局、東京本社経済部、アジア総局(バンコク)、ニューデリー支局などを経て、2016年から2019年までベルリン支局長。この間、経済部次長、国際報道部次長・部長代理を務める。著書に「愛国とナチの間~メルケルのドイツはなぜ躓いたのか」(朝日新聞出版)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ベトナム戦争時に学生時代を送った「1968年世代」が残したもの
ドイツの「政治の季節」がもたらした最大の遺産は、おそらく学校での政治教育だろう。
ギムナジウム(日本の中学校と高校に相当)の社会科の授業では、原発問題など極めて時事的なテーマが取り上げられ、選挙前の模擬投票では政党別に役割を割り振られた生徒が、その政策の是非をめぐって議論する。先生が自らの意見を述べることも珍しくない。調和を前提とせず、現代的な問題を批判的に論じ合うこうしたスタイルは、60年代後半以降に始まった。76年に教育関係者の間で成立した三つの合意が、その理念をよく表している。