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黒人差別の歴史、抗う運動を伝える~「BLM PICNIC」に親富祖愛さんが込めた思い

同じ人間なのに肌の色の違いで時代錯誤なことが平気で起きている理不尽をやめたい

安田菜津紀 フォトジャーナリスト

 海岸線をなぞる道を車で北上し、たどりついた市場は、ほんのりと海の香りがただよっていた。沖縄県・本部町の町営市場は、コロナ禍が落ち着いているとはいえ、土日でも人足はまだ少ない。

拡大昼下がりの本部町営市場

 甘味や雑貨を売る小さな店と店の間の細道を抜け、私は「Ai&Dai desings」を訪ねた。草木染の服やアクセサリーが並ぶ店内にはカフェが併設され、カラフルな内装を見ながらコーヒーや手作りのケーキが楽しめる。

 店の扉のグラフィティには「Black Lives Matter」の文字が綴られ、店頭には黒人差別の歴史やそれに抗う運動などを伝える冊子「BLM PICNIC」が並ぶ。夫と共にこの店を営む親富祖愛(おやふそ・あい)さんが、2020年12月に製作したものだ。小学生でも手に取ることができるよう、平易な言葉で綴られ、漢字に振り仮名もふってある。

拡大親富祖愛さん。Ai&Dai desingsの前で

「怒」と書かれたプラカードに抱いた違和感

 親富祖さんはうちなんちゅ(沖縄人)の母、米海軍の兵士だった黒人の父の間に生まれ、親富祖さんが4歳の時、父は軍を除隊し帰国した。

 「小学校高学年の時、社会科の授業で奴隷のページが出てくるのが、恐怖だったんですよね。そういう目で周りに見られるんじゃないかって。一方で、その歴史を伝えるページはたった2ページしかなくて、あの続きを作らなければってずっと思っていたんです」

 もともと、基地問題を伝える解説雑誌として「PICNIC」は2号、刊行されていた。

 「仲井眞弘多知事(当時)が基地建設のための辺野古埋立承認を表明したとき、県庁前の抗議活動に行ったんです。そこで『怒』と書かれたプラカードを持たされて、なんだか違和感があったんですよね。自分たちの表現方法ではないよね、とものづくりの仲間たちとも話していたんです」

※「BLM PICNIC」の情報は「こちら


筆者

安田菜津紀

安田菜津紀(やすだ・なつき) フォトジャーナリスト

1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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