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武蔵野市の住民投票条例(案)の主眼は「外国人投票権」ではなく「実施必至型」にある(下)

市民は直接請求で再挑戦すべきだ

今井 一 ジャーナリスト・[国民投票/住民投票]情報室事務局長

有権者の半数の署名を集めても否決

 その否決続きの事例を具体的に示そう。1998年1月14日に「産廃処理施設」をめぐって岡山県吉永町で直接請求された住民投票条例案が議会で可決・制定された後、各地で行われたこの種の直接請求は、3年3か月にわたり39件連続否決となった。

 そのなかには、愛媛県大洲市(有権者総数の53%)、熊本県人吉市(同48%)、徳島市(同49%)のように、夥しい数の法定署名を集めて請求しながら否決された事例もある。

 直接請求でのこうした署名は、法定署名と呼ばれるもので、街頭などでよく行われている一般的な署名集めとはかなり異なる。署名収集を担う人(受任者)は、住所や名前を記して選管に提出しなければならない。そして、署名者は住所、生年月日を記し、自身の印鑑か指印により押印する必要がある(「押印」は2021年9月に廃止)。

 大洲、人吉、徳島の上記3市の市民(請求代表者及び受任者)が、有権者のほぼ半数からそうした署名を得て市長に条例案の制定を請求した営みは大変なことで、それに要した時間と労力は計り知れない。

 にもかかわらず、3市の議会は合理的な理由もなく請求を拒み、住民投票条例を否決した。つまり住民投票をやって民意を確認し汲み取ろうとはせず、「議員は住民の代表者なのだから、大事なことは自分たちが決める」と、ダム建設を容認・促進する姿勢を取ったわけだ。

 このように議会が住民投票条例の制定を拒んだ件数は、1979年2月に立川市議会が「米軍立川基地の跡地利用」に関する住民投票条例制定の請求を否決して以降2021年12月まで、直接請求の否決は570件(可決は117件)で否決率は83%に達している。

 法定署名を有権者の3割集めようが5割集めようが議会が請求を拒否できる現行制度は、市民自治、住民主権を損なうもので、諸外国の制度と比較しても瑕疵があると言わざるを得ない。

 掲示した図を見てほしい。左側は「条例の制定・改廃の請求」で、右側は「議員・首長や議会への解職、解散請求(リコール)」左右両方とも地方自治法で定められた直接請求の手続きの流れをチャート化したものだが、制度としてはまったく違っている。

拡大

 向かって右側の図、議員や首長の解職、議会の解散を求める(リコール)直接請求は、規定の連署をもって選挙管理委員会に請求すれば、議員・首長、議会は求めに応じて辞職、解散するか、求めを拒んで有権者全体の審判を仰ぐ(「解職投票」、「解散投票」と呼ばれる住民投票の実施)かどちらかを選択することになる。

 ところが、

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筆者

今井 一

今井 一(いまい・はじめ) ジャーナリスト・[国民投票/住民投票]情報室事務局長

 1991年以降、ソ連、ロシア、スイス、フランス、イギリスなどで国民投票の取材を重ね、国内では新潟県巻町、名護市、徳島市など各地で実施された住民投票を精力的に取材。2006年~07年には、衆参各院の憲法調査特別委員会に参考人及び公述人として招致され、国民投票のあるべきルールについて陳述する。著書に『CZEŚĆ!(チェシチ)──うねるポーランドへ』(朝日新聞社)、『住民投票』(岩波書店)、『「憲法9条」国民投票』(集英社)、『国民投票の総て』、『住民投票の総て』(ともに[国民投票/住民投票]情報室)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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