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2022年を展望する~傲慢な中ロと余裕を欠く米国、世界はどうなる、日本は?

田中均 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

 2022年は主要国で選挙が相次ぎ、国際関係は翻弄されそうだ。誰が指導者になるかだけでなく、選挙となるとナショナリズムが高揚し、ポピュリズム的になる傾向があり、国家間の関係が厳しくなることが容易に想像される。日本とドイツでは既に今年秋に選挙が行われ、日本では岸田政権が、ドイツでは社民党のショルツ氏を首相とする新たな三党連立リベラル政権が誕生した。来年3月には韓国大統領選挙が新しい指導者を生むこととなり、4月には仏大統領選挙、夏には日本の参議院選挙、秋には米国中間選挙、そして中国では習近平総書記の異例の三期目を決めることが想定されている5年に一度の共産党大会が開催される。

 国際関係は大きな試練を迎える。世界は「イデオロギーの対立」や「グローバリゼーションの是非」といった比較的立場を決めやすい環境にはなく、各国は多様な価値観の中で自国利益を追求していく事になる。激動の一年になりそうな世界を展望してみよう。そして日本の生きる道をどう選ぶべきなのか考えてみよう。

中国:任期延長に臨む習総書記、国内引き締めと対外拡大継続

拡大六中全会で発言する習近平氏=2021年11月
 中国はおよそ10年に及ぶ習近平政権で、「中国の夢」、即ち2049年の建国100周年には米国に並ぶ国力を持つ国になることを謳い、国内的には強力な引き締めを行うとともに、対外的な影響力の拡大にまい進してきた。その原動力となったのはコロナ前には成長率7%近くを維持していた経済成長であり、今日、コロナからの回復に懸命となっている。

 そして国力の増進とともに対外的には「一帯一路」のインフラ支援を掲げつつ、一方では「戦狼外交」と表現される攻撃的なアプローチをとってきた。その間、「一国二制度」を実質放棄し、「香港の中国化」を徹底的に推し進めてきた。最近の立法会選挙に見られる通り民主派は壊滅した。新疆ウイグル自治区での呵責なきウイグル族を中心とする少数民族弾圧や台湾に対する軍事的けん制は続く。

 習近平総書記はこの路線を続けることで来年秋の共産党大会での任期延長に臨もうとしている。

ロシア:大国主義実現へ中国と蜜月、ウクライナ巡る緊張続く

拡大バイデン米大統領との会談後の記者会見でウクライナ問題などをめぐって欧米メディアとやりとりするロシアのプーチン大統領=2021年6月16日、ジュネーブ
 それに比しロシアにはエネルギー産業以外には強い産業が存在せず、国力は明らかに衰えた。今、ロシアを特色づけているのは帝政時代から変わらぬ「大国主義」だ。

 プーチン大統領はソ連の崩壊を「歴史上の最大の悲劇」と呼び、国民の大国志向に乗じて、クリミアを併合し、再びウクライナを脅かしている。ロシアにとってはベラルーシとウクライナをNATOからの最後の防衛ラインと見ているのだろう。ウクライナを巡る緊張は相当長く続く。そして米国と並ぶ核戦力や強大な軍事力が大国志向を支える重要な手立てとなっている。

 プーチン大統領は憲法改正を繰り返し、理論上は2036年まで大統領職にとどまることが出来る。プーチン大統領にとってグローバルな世界で大国主義を実現できるのは最早ロシア単独の力でないことは明らかで、中国との連携が唯一の道と考えているのだろう。中ロ関係の蜜月時代は続いていく。

米国:超大国らしからぬ余裕のなさ、背景に国内の厳しい分断

拡大ホワイトハウスで演説するバイデン米大統領=2021年11月23日、ワシントン
 一方、バイデン大統領の米国を特色づけるのは超大国らしからぬ「余裕のなさ」だ。

 バイデン大統領は国際協調主義を唱えつつも、十分な国際的協議なくアフガニスタンからの拙速な撤兵に走り、中国を念頭に「AUKUS」と称される米・豪・英の安全保障機構を創設し、豪州に潜水艦契約を廃棄された仏の怒りを買った。そして、十分な意味合いとインパクトを欠く「民主主義サミット」を主催した。アフガンからの撤退の態様は米国の抑止力の信頼性を揺らがせ、民主主義サミットの開催は建設的なビジョンなく世界を「民主主義国」と「専制主義国」に分断していくだけではないかという危惧を生んでいる。

 このような米国の「余裕を欠いた」行動の背景にあるのは、米国国内政治の厳しい分断だ。来年11月に中間選挙を控え、上下両院で民主党が多数を維持し続けることは、民主党の優先課題を実行していくために極めて重要な課題である。しかし、その見通しが十分ある訳ではない。期待されたコロナ収束には程遠く、インフラ予算はようやく成立したが、社会保障を中核とする歳出予算については民主党議員の造反により成立の見通しが立っていない。

 バイデン大統領の支持率は40%台前半に落ち、2024年にトランプ前大統領の再出馬を支持する勢いは衰えを見せない。バイデン的な伝統的政党色の濃い姿勢とトランプ的な非伝統的で大衆に直接打って出る姿勢が織りなす社会の分断はますます根深いものとなっている。国内の分断を前に、バイデン大統領が内外に示そうとしているのは「民主主義・人権の擁護者である米国」の姿なのだろうか。

米中対立は激化もグローバル課題への協力は存在

 このような背景の下、中国と米国の対立は2022年にますます激化するだろうし、国際関係の安定には程遠い状況が続くと考えねばなるまい。ただ、米中間には軍事的対立と政治的競争以外に経済的相互依存関係や気候変動などのグローバル課題への協力関係が存在し、米中がトータルに対立に向かうことが想定されるわけではない。

 他方、もし米中間で対立が火を噴くとすれば、それは台湾海峡を巡ってであろう。しかし、台湾が独立に向けて大きく動き出し、中国が軍事行動を起こし、米国が軍事介入をするといった現状を大きく変える行動は全ての当事者にとってあまりに負担が大きく、台湾有事の蓋然性は低い。

※関連動画をYouTubeでも公開中――“「台湾有事は日本有事」なのか?”【田中均の国際政治塾】

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筆者

田中均

田中均(たなか・ひとし) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官(96-98)、在サンフランシスコ日本国総領事(98-2000)、経済局長(00-01)、アジア大洋州局長(01-02)を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、2005年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、2010年10月に(株)日本総合研究所 国際戦略研究所理事長に就任。2006年4月より2018年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、2019年11月10日刊行)、『日本外交の挑戦』(角川新書、2015年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、2009年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、2009年)など。2021年3月よりTwitter開始、毎日リアルタイムで発信中。(@TanakaDiplomat)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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