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ショルツ首相は「3頭立て馬車」を乗りこなせるか~試練に直面するドイツ新政権

立場も政策もバラバラの連立3党・内外に難題山積――安定感だけで首相は務まらぬ

花田吉隆 元防衛大学校教授

外交:対中、対ロ政策をどうするのか

 第三は外交で対中、対露政策をどうするか。対中政策に関しては、メルケル氏は親中を基本とした。しかし新たに外相ポストに座った緑の党の共同代表アンナレーナ・ベーアボック氏は中国の人権侵害に厳しい。

拡大緑の党の2人の共同代表。外相になったアンナレーナ・ベーアボック氏(左)と副首相兼経済・気候相になったロベルト・ハーベック氏=photocosmos1/shutterstock.com

対中強硬姿勢と経済利益の折り合いを迫られる

 メルケル氏は在任中12度の中国訪問を行う等、中国との親密な関係を維持した。その甲斐もあり、ドイツの対中貿易は大幅に増加、フォルクスワーゲンは4割を中国市場で販売するまでになった。このビジネス重視の対中政策は、中国が台頭する前は良かった。

拡大北京で会談するドイツのメルケル首相(左)と中国の習近平国家主席=2018年5月24日
 しかし、習近平主席がなりふり構わぬ大国主義を振りかざすに及び、さすがのドイツも眉を顰めざるを得ない。トランプ政権以来、米中関係が一気に悪化し、今や、新疆ウイグルや香港の人権問題がクローズアップされている。メルケル首相の親中路線は、そのままでは維持できないのだ。

 合意文書は、台湾の国際機関参加を支持するとし、新疆ウイグル地域の人権問題や香港の一国二制度の問題にも言及した。対中強硬姿勢と経済利益をどう折り合い付けていくか、ショルツ氏は難しい政権運営を迫られることになる。

拡大上海モーターショーで、新型車「IDクロス」を紹介する独フォルクスワーゲンのヘルベルト・ディースCEO。「バッテリーセルは中国製を使う。中国の電気自動車化に貢献する」と強調した=2017年4月19日

ウクライナ危機で外交の試練―ガスパイプラインで板挟み

 対露政策に関しては、社会民主党は基本的に親露だ。党内にはロシアに親近感を抱く者が多く、ロシアといえば、それだけで受入れる向きが少なくない。尤も、ショルツ氏は少し肌合いが違う。どちらかといえば「冷めて」いて、ロシアに対し理性的な判断が可能だ。

拡大バルト海を経由してロシアとドイツを結ぶガスパイプライン「ノルドストリーム2」のルートイメージ図=Shutterstock.com
 さて、ロシアによるウクライナ侵攻の可能性が刻一刻と迫る中、ここにきて、にわかに浮上してきたのが独露間の天然ガス輸送パイプライン、ノルドストリーム2の稼働問題だ。メルケル氏は原発廃止を決めたこともあり、天然ガス輸入を強力に推し進めて来た。しかしもし侵攻が行われれば、米国は制裁措置の一つとして、ドイツは、ノルドストリーム2の稼働を停止すべきだと迫る。

 これに新政権としてどう対応するか、ショルツ氏にとり外交上、初の試練になる。ちなみにベーアボック外相は稼働に反対

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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