福島伸享(ふくしま・のぶゆき) 衆議院議員
1970年生まれ。1995年東京大学農学部を卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省。橋本龍太郎政権での行政改革や小泉政権での構造改革特区制度の創設の携わる。2009年衆議院議員初当選(民主党)の後、2021年の衆議院議員選挙で3選。現在無所属で5人会派「有志の会」に所属。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
既存の政党の枠組みでは平成の30年間で停滞した日本の危機的な状況は打開できない
――どういうことですか?
福島 政治主導とは、立法府である国会が主導して政治を行うことです。つまり、民意を反映する国会で法律がつくられ、その法律に基づいて政府が動くのが、真の政治主導なんです。ところが、多くの民主党議員は「政治家主導」と取り違え、各省の大臣や副大臣、政務官になったとたんに、自分が力を持ったと勘違いしました。それだと、自民党政権と同じです。
憲法上、国会には強い権限が与えられています。立法府の承認を得なければ、政府与党といえども何も進められません。ところが、政府に入った民主党議員は権力を手にして何でもできると考えた。そして、消費税の問題などを推し進め、党をバラバラにして有権者の失望をかい、結局、政権を失った。
――野田佳彦政権で消費増税法案が提出された際、福島さんは党方針に反して反対票を投じ、党員資格停止処分を受けています。他にもこの法案をめぐり離党者がでるなど、民主党内は文字どおりバラバラになりました。
福島 バラバラになったのが民主党政権の失敗の原因だと言われますが、バラバラになったのは結果であって、失敗の原因ではありません。本当の原因は、立法府が法律をつくって行政府を動かしていくという「真の政治主導」を実現できなかった点にあると思います。
――その後、政権を奪還した自民党が、公明党と連立しつつ、安倍晋三政権、菅義偉政権、岸田文雄政権と政権を担い続け、政権交代可能な二大政党制はすっかり影を潜めています。
福島 2012年の民主党政権の崩壊から、民主党系をルーツとする野党は低迷し続けています。国民は「あなたたちの政治は、我々の期待にこたえるものではない」と退場を宣告している。にもかかわらず、政党の合従連衡などをして、居座っている。議員として生き延びようとしているだけと、野党の政治家たち、おそらく私もそう見られていたと思います。その象徴が、2017年10月の衆院選で起きた「希望の党の騒動」でした。
私自身は、民主党系をルーツとする野党の限界を乗り越えるためにも、民主党を超克する政党を旗揚げしようと考え、主導していた立場でしたが、多くの国民にすれば、前原誠司さん(当時、民進党代表)のもと民進党議員が「希望の党」になだれ込み、しかも排除され、揚げ句のはてに立憲民主党ができるといった「ドタバタ劇」を見せられ、すっかり白けてしまったと思います。
――一方で自民党は長期政権を維持しています。冷戦が終わって時代遅れになったはずの自民党は、時代に合った政党になっているのでしょうか。
福島 そうではありません。自民党への支持は決して積極的なものではない。2009年までと12年以降で決定的に違うのは国政選挙の投票率です。09年衆院選の69.28%以降、衆院選の投票率は下落の一途で、ここ数回は50%台の低投票率。自民党はそこで半分の票をとっているだけ。全体からすれば四分の一の支持に基づく権力に過ぎません。
無党派層、無関心層っていいますが、私の皮膚感覚では、投票に行ってない人のほうが政治意識が高いと思えてなりません。入れたい党がないから、行く気にならないのです。こう言ったら怒られちゃいますけども、投票に行くのは、何があっても行く人たちで、政治に期待をしたり、政治で何かを実現しようと思ったりしている層は2012年以降、選挙に行かなくなっているんじゃないでしょうか。
大多数の有権者から支持されていないという点で、時代に合った政党とはとうてい言えないと思います。