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タリバン政権下のアフガニスタンに人道支援と国際制裁を分けた対応が必要なワケ

アフガンの国民を主体に据えて中長期の発展を目指すことが重要だ

小美野剛 ジャパン・プラットフォーム共同代表理事 CWS Japan事務局長

人道危機下にこそ、子ども、女性を守る教育支援

 その一つが教育への支援である。12月初旬、私が共同代表を務めるジャパン・プラットフォーム(JPF)、シャンティ国際ボランティア会(SVA)の共催で、「人道危機下にこそ、子ども、女性を守る教育支援 ~アフガニスタン現場からの友の声 第2弾~」という緊急オンラインイベントが開かれた。

 食べるものさえ満足にないなか、なぜ教育なのかと疑問を感じる方もいるだろう。しかし、実はこの視点は、危機的状態を脱出するうえでこのうえなく重要だ。ウェビナーで登壇してくれた現地のアフガニスタン人ソーシャルワーカーには、心より敬意を表したい。教育を受けることで「支援される側から支援する側へ」転換した人々の貴重な証言をいただけた。

 アフガニスタンでは現在、とりわけ女性の中等教育が著しく制限されており、「教育を受けられないのであれば死んだも同然」という声が、子どもたちから聞こえてくる。「自分たちのアイデンティティがなくなってしまった」と嘆く人も多い。

 だが、こうした制限下にありながら、なお教育環境を維持しようとしている人がいるのだ。それは、自分自身が、著しい制限下で苦しみながら教育を受け続けた結果、その重要性を肌身で感じているからに他ならない。

 世界には、「緊急時の教育支援の最低基準(INEE)」という国際スタンダードが存在する。INEEによると、「緊急時の教育は、安全な学習環境を提供することで、人々の尊厳や生命を守る」ことを目指しており、「安全な環境にあれば、男子も女子も、性的、経済的に搾取されたり、その他のリスクに晒される可能性は低下する」といった側面も重視されている。

現地の有志による課題解決が不可欠

 様々な危機に接してきた経験から、私は現地の有志による課題解決が、危機を脱する際には不可欠だと強く感じている。

 危機下にある国では、法制度のような仕組み、行政のガバナンス、住民への基礎的サービスなど、あらゆる面でシステムが脆弱になる。それは、戦争が国家にもたらす影響とよく似ている。そうした状況で、外国人が根本的な解決をすることは容易ではない。結局、現地の人が教育を受け、自分たちの力で、「根本的な課題解決」に向けて一歩一歩進む以外に近道はない。

 「根本的な課題解決」を考える際には、直近のニーズに加え、中長期、さらに社会を幅広く見る視点が求められるが、そういった視点を教育は養う。現在のアフガンの行政職員にも、そうした観点からNGOと一緒になってタリバン政権への進言をしている人がいる。タリバン政権では、前政権の行政プロセスを多くの面で踏襲している。これまでの支援で築き上げてきた社会インフラや価値観を土台に、タリバンと向き合うことは意味がある。

 教育を受けた人が支援や改善の動きの原動力となる。そういった人を増やすことが、結果的にアフガニスタンの国づくりに繋がるのである。

拡大アフガニスタン女子教育支援の現場から©CWS Japan

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筆者

小美野剛

小美野剛(こみの・たけし) ジャパン・プラットフォーム共同代表理事 CWS Japan事務局長

1980年生まれ。特定非営利活動法人CWS Japan事務局長及び認定NPOジャパン・プラットフォーム共同代表理事。アジア防災緊急対応ネットワーク(ADRRN)理事兼事務局長、防災・減災日本CSOネットワーク(JCC-DRR)共同事務局、支援の質とアカウンタビリティ向上ネットワーク(JQAN)代表などを兼務。アフガニスタン、パキスタン、ミャンマー、タイなどの現場を経て東日本大震災から日本の事業も開始した。同志社大卒業、ブランダイス大学大学院開発学修士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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