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自民党との連立で「質的役割」を果たした公明党~ライバルは日本維新の会か

「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【1】

岡野裕元 一般財団法人行政管理研究センター研究員

国会議員と地方議員のリンケージが弱体化

 このように、政治改革、選挙制度改革、行政改革、地方分権改革、公務員制度改革などが次々と行われた結果、首相官邸と首長・地方議会(地方議員)がそれぞれの領域で力を増した。と同時に、政治改革、選挙制度改革によって、国会議員・地方議員のリンケージが総体として弱まるという帰結がもたらされた。

 中選挙区制下の衆院選では、同じ自民党の候補者同士が激しく競合する環境にあった。選挙で勝利するためには、地方議員を系列化し、維持する必要に迫られた。地方議員も戦略的にこの系列関係を利用した。しかし、政治改革、選挙制度改革によって小選挙区制が導入された結果、「衆議院議員は、選挙区内のすべての自民党系の地方議員の協力を得ることができるようになり、系列を維持するインセンティブが弱まった」(中北浩爾『自民党—「一強」の実像』中央公論新社、2017、p.267)。

 こうして(圧倒的に割合が多い自民党や保守系無所属の)地方議員は、より自律化した。ただ、その一方で、行財政面での中央・地方関係については、地方分権改革以前よりも分離が進行しているとはいえ、依然として融合したままの面も持ち合わせている。

 それでは、弱体化した政治における中央・地方関係をリンケージを補う存在として、どのようなアクターが考えられるであろうか。その役割を果たすのは、政治改革で「政党本位」として重視されるようになった政党組織(中央・地方)しかない。

「二大政党」中央と地方の対立が表面化

 では現在、政党はその任にたえるのか。統治構造改革後の政党組織の実態を見ると、悲観せざるを得ない。というのも、平成時代の「二大政党」だった自民党と、民主党に源をもつ政党ともに共通しているのは、中央・地方関係が上手くリンケージできていない実態だからである。

 自民党における中央・地方の組織関係を見ると、県連が自律化したことにともない、党中央との対立が表面化するようになった(笹部真理子『「自民党型政治」の形成・確立・展開—分権的組織と県連の多様性—』木鐸社、2017年)。また、国会議員を媒介とする党本部と県連のリンクが弱まり、両者の足並みの乱れも生じたことも少なくないと指摘されている(中北浩爾『自民党—「一強」の実像』中央公論新社、2017年、p.271)。

拡大自由民主党本部=2021年7月17日、東京都千代田区永田町、朝日新聞社ヘリから

 そもそも自民党の場合、国政での意思決定は、全て国会議員によって行われ、地方側の意向が反映されにくいという構造があった。くわえて、地方分権改革のなかで、自治体の行財政強化の視点(「受け皿論」)から平成の大合併が生じ、自民党と親和性のある保守系無所属議員が大幅に減少した。数の面においても、中央・地方のリンケージは弱体化の一途をたどっていると言っていい。

 内閣への政策決定一元化を目指した民主党政権でも、党内ガバナンスの不全から、政権運営がぎくしゃくしただけでなく、中央・地方間の関係においても状況は芳しくなかった。当時の一つの象徴的事例として、民主党神奈川県連のパーティーに出席した岡田克也幹事長(菅直人政権)が、「帰れコール」のヤジを浴びせられるという“事件”も発生している。


筆者

岡野裕元

岡野裕元(おかの・ひろもと) 一般財団法人行政管理研究センター研究員

1989年千葉県佐倉市出身。学習院大学法学部卒業。学習院大学大学院政治学研究科政治学専攻博士後期課程修了、博士(政治学)。現在、一般財団法人行政管理研究センター研究員のほか、報道番組の司会者の政治アドバイザーも務める。元青山学院大学文学部・学習院大学法学部非常勤講師。専門は、地方政治、政治学。著書に、『都道府県議会選挙の研究』(成文堂)、『官邸主導と自民党政治――小泉政権の史的検証』(共著、吉田書店)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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