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「聞く力」岸田文雄首相の術中~「真空総理」小渕氏以来の流儀にメディアは……

旗幟鮮明で敵と味方を峻別する安倍流と真逆。「分かりにくさ」に絡め取られないために

曽我豪 朝日新聞編集委員(政治担当)

 確かに、岸田文雄という政治家は分かりやすくはないだろう。筆者の取材体験でも、大体こんな感じである。

 例えば与野党の政策評や人物評を尋ねても、結論に至るまでが実に長い。

 まずは、「こう言われていますよね」と永田町に流れる通説の評価を挙げ、論点ごとに自分の思う是非を丹念に並べ上げたあげく、ようやく出した結論も、「その評価も分からないではありません」などと二重否定文で終わったりする。結局のところ、本人の考えがよく分からないまま、終わるのだ。

 少なくとも、完全肯定か完全否定かに両極化されがちな今日のデジタルな風潮とは、無縁の話し方なのである。

拡大取材に応じる岸田文雄首相=2022年1月24日、首相官邸

平衡感覚が勝ち過ぎて、何とも分かりにくく……

 首相の座に就いたから、あるいは参院選を控えているから、安全運転に徹して腹の内を見せないというわけでもなさそうだ。

 今から5年前、外相から自民党政調会長に転じた直後の2017年12月に産経新聞が行なったインタビューからして、既に「岸田流」だった。表題にしてからが「野党のリベラルとは、中身も実態も全然違います」と、あくまで相対的な立ち位置の説明である。

 とはいえ、一瞬、おっと思わせる発言がないわけではない。時の安倍晋三首相に対して「政治家としての哲学、信念は簡単に言えば、首相が保守。あえて言えばタカ派なんでしょう。私はリベラル、ハト派」と言った。

 翌年秋の総裁選に向け、さすがに慎重居士も首相との差異化を図り始めたかと思いきや、続く言葉は「首相と私は、政治信条の違いがあるんですが、政治にとって大事なのは、バランス」だった。その言葉通り、焦点の憲法改正論も平衡感覚が勝ち過ぎて、やはり何とも分かりにくい。

 「安倍晋三首相(党総裁)は『自衛隊をしっかり明記することが必要ではないか』と提案しました。……私の『現行憲法下で合憲』という考えと、安倍首相の考えが両立するかは、じっくり考えてみないと分からない。ただ、首相は『明記するだけで実態は変わらない』という言い方をされる。そうならば私の考え方と矛盾しないので、提案は否定しません」

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筆者

曽我豪

曽我豪(そが・たけし) 朝日新聞編集委員(政治担当)

1962年生まれ。三重県出身。1985年、東大法卒、朝日新聞入社。熊本支局、西部本社社会部を経て89年政治部。総理番、平河ク・梶山幹事長番、野党ク・民社党担当、文部、建設・国土、労働省など担当。94年、週刊朝日。 オウム事件、阪神大震災、など。テリー伊藤氏の架空政治小説を担当(後に「永田町風雲録」として出版)。97年、政治部 金融国会で「政策新人類」を造語。2000年、月刊誌「論座」副編集長。01年 政治部 小泉政権誕生に遭遇。05年、政治部デスク。07年、編集局編集委員(政治担当)。11年、政治部長。14年、編集委員(政治担当)。15年 東大客員教授

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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