不十分な説明にユネスコ「強い遺憾」、不名誉な督促に岸田政権はどう対応するのか
2022年02月07日
7年前、国際舞台でちょろまかしたツケが回ってきたということか。
慎重論の背景にあるのが、2015年にすったもんだの末に登録された「明治日本の産業革命遺産」という懸案である。
このやりとりの4日前には読売新聞が「推薦見送りへ」と報じていた。記事は結果として誤ったものの、この時点で「見送り」の空気が強まっていたことは確かだ。
韓国政府は佐渡の鉱山で戦時中、朝鮮半島出身者が働いており、「強制労働被害の現場だ」と推薦しないよう求めていた。だが林外相の答弁は、高市氏をかわすための辞令ではなかった。韓国への外交的配慮を案じる声は政府内でほとんどなかった。強く引っかかったのは、登録が不発に終わる可能性に加え、「明治日本の産業革命遺産」登録の際のトラウマとも言える騒動のことだった。
2015年の6月から7月にかけ、日韓両政府による強制労働をめぐる問題は、「明治日本の産業革命遺産」を審議するユネスコを舞台に大きく混乱した。
韓国政府は当初、単なるアクシデントで誤解にすぎないとして、日本への説明にあたっていたが、ある日から態度を一転させる。その転機は6月30日、杉山晋輔外務審議官(当時)の訪韓だった。杉山氏はアポイントなしにソウルに乗り込み、政府高官への面会を申し出るという行動に出たため、韓国側が「非礼にもほどがある」と反発を強め、文言調整の前の段階に戻った。
ドイツで開かれていた世界遺産委員会の審議時間は迫るが、日韓対立は解けない。登録はコンセンサスによる意思決定が基本で、紛糾した場合、21カ国で構成される委員国のうち、3分の2以上が賛同すれば可能となる。日本政府・与党内には投票で決すべしとの「主戦論」も出たが、確実に賛成票を得られるかの確信もなかった。他の委員国の関係者からは「日韓の話なら、まず当事者同士でよく話し合ってから持ってきてはどうか」という、いらだちの声も出始めていた。
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