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佐渡金山、世界遺産登録に立ちはだかる「明治日本」の影

不十分な説明にユネスコ「強い遺憾」、不名誉な督促に岸田政権はどう対応するのか

箱田哲也 朝日新聞論説委員

ユネスコ舞台に「強制労働」問題が紛糾

 2015年の6月から7月にかけ、日韓両政府による強制労働をめぐる問題は、「明治日本の産業革命遺産」を審議するユネスコを舞台に大きく混乱した。

拡大「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産への登録について審議したユネスコ世界遺産委員会の議場=2015年7月4日、ドイツ西部ボン
 この時も韓国政府が、「明治日本」の資産には朝鮮半島から来た労働者が強制的に働かされたところがあるとして反発。二国間協議を経て、いったん話がまとまったが、登録を審議するユネスコ世界遺産委員会が開かれる直前になってハプニングが起きる。日本政府関係者が内々に入手した韓国側の演説文に、強い表現で強制労働を示す言葉が入っていることが判明したのだ。実際には韓国外交当局の作った正式な演説文ではなかったのだが、日本政府内では「日韓で調整済みを装い、会議本番では強制労働を非難するつもりか」との疑心が広がり、大騒ぎになった。

 韓国政府は当初、単なるアクシデントで誤解にすぎないとして、日本への説明にあたっていたが、ある日から態度を一転させる。その転機は6月30日、杉山晋輔外務審議官(当時)の訪韓だった。杉山氏はアポイントなしにソウルに乗り込み、政府高官への面会を申し出るという行動に出たため、韓国側が「非礼にもほどがある」と反発を強め、文言調整の前の段階に戻った。

 ドイツで開かれていた世界遺産委員会の審議時間は迫るが、日韓対立は解けない。登録はコンセンサスによる意思決定が基本で、紛糾した場合、21カ国で構成される委員国のうち、3分の2以上が賛同すれば可能となる。日本政府・与党内には投票で決すべしとの「主戦論」も出たが、確実に賛成票を得られるかの確信もなかった。他の委員国の関係者からは「日韓の話なら、まず当事者同士でよく話し合ってから持ってきてはどうか」という、いらだちの声も出始めていた。

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筆者

箱田哲也

箱田哲也(はこだ・てつや) 朝日新聞論説委員

1988年4月、朝日新聞入社。初任地の鹿児島支局や旧産炭地の筑豊支局(福岡県)などを経て、97年から沖縄・那覇支局で在日米軍問題を取材。朝鮮半島関係では、94年にソウルの延世大学語学堂で韓国語研修。99年からと2008年からの2度にわたり、計10年、ソウルで特派員生活をおくった。13年4月より現職。翻訳した『慰安婦運動、聖域から広場へ』(沈揆先著、朝日新聞出版)が2022年1月刊行された。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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