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民主主義と公正市場を強化する「憲法改革」が経済成長と財政再建をもたらす

産業の「知識化」への適合と、政策決定の透明化、税制への信頼がカギ

田中信一郎 千葉商科大学基盤教育機構准教授

自民党改憲案が目指すものは「革命」

 改革への考え方の相違は、現状の社会と社会システムとの関係への認識の差から生まれる。

 改革とは、一般的に「社会の変動や危機に対応し、あるいは適合するように社会的、経済的、政治的諸制度や諸組織、諸政策などを部分的に改善すること」「社会の基本的な仕組みの全面的変革である革命とは区別される。改革は、既存体制の許容範囲内で改善や改良を重ね、場合によっては変革主体の要求の一部を充足することになるが、他方体制の全面的変革や崩壊を防止する」ことである(ブリタニカ国際大百科事典)。

 現代の日本に当てはめれば、日本国憲法の枠内(既存体制の許容範囲内)で、社会システム(社会的、経済的、政治的諸制度や諸組織、諸政策)について、現実の課題を解決する(社会の変動や危機に対応し、あるいは適合する)よう、より良くする(部分的に改善する)ことになろう。

 また、この定義からすれば、自由民主党の憲法改正案は、憲法という「社会の基本的な仕組みの全面的変革」をもたらすことから、改革でなく「革命」と称するのが適当となる。

自民党が2012にまとめた「日本国憲法改正草案」とその解説集 拡大自民党が2012にまとめた「日本国憲法改正草案」とその解説集

 現状の社会と社会システムの関係への認識は「それらが適合している」「それらが適合していない」の二つに分かれる。もちろん、前者であっても改善がまったく不要ということでなく、状況に応じた修正を重ねることで、社会システムを根本から変える必要はないという立場である。他方、後者は社会システムを根本から変えなければならないという立場であるが、あくまで憲法の定める諸原則の枠内という前提である。

 「適合している」との認識であれば、改革は不要との結論に至る。様々な改善や修正は必要であっても、社会システムを根本から改める必要はない。

 社会の諸問題は、改善や修正、運営の不十分さから発生しているのであって、それらを改めれば自ずと社会システムが機能する。年金システムを例にすれば、現役人口の減少や平均余命の伸びに合わせ、給付水準を調整する「マクロ経済スライド」の導入によって、年金システムを根本的に改める必要はないとの認識が、これに当たる。

 「適合していない」との認識であれば、改革は必要との結論に至る。社会システムの前提が大きく変化しているため、改善や修正で対応できず、根本的にシステムを立て直す必要がある。社会の諸問題は、社会システムの前提が変化したことから発生しているのであって、ゼロベースで立て直すことで社会システムが機能する。年金システムを例にすれば、人口増加を前提として構築されている以上、人口減少時代においては改善や修正で対応できず、税や社会保険の役割を含めて、人口減少を前提とした年金システムに改めなければならないという認識が、これに当たる。

 筆者は「改革が必要」との結論である。すなわち、現行の社会システムで前提とされていたことがことごとく覆ってしまったため、現状の社会と社会システムとの間に大きな断裂が生じている。多くの社会課題が社会システムの機能不全で発生し、その原因は社会システムの前提条件が真逆になったことにある。

 具体的には、社会システムの三大前提「人口増加」「経済成長」「小さな環境制約」が、真逆の前提「人口減少」「経済成熟」「大きな環境制約」になっている。詳しくは、拙著『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』(現代書館)で根拠を示して論じたので、ご関心のある方はご参照いただきたい。

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筆者

田中信一郎

田中信一郎(たなか・しんいちろう) 千葉商科大学基盤教育機構准教授

博士(政治学)。国会議員政策担当秘書、明治大学政治経済学部専任助手、横浜市地球温暖化対策事業本部政策調査役、内閣府行政刷新会議事務局上席政策調査員、内閣官房国家戦略室上席政策調査員、長野県企画振興部総合政策課・環境部環境エネルギー課企画幹、自然エネルギー財団特任研究員等を経て、現在に至る。著書に『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』『信州はエネルギーシフトする』、共著に『国民のためのエネルギー原論』『再生可能エネルギー開発・運用にかかわる法規と実務ハンドブック』などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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