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問題だらけのコロナ感染症対応から考える公明党の機能~自民党とどう違うか

「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【2】

岡野裕元 一般財団法人行政管理研究センター研究員

「新型コロナでつくられた空気」を使って対応

 清水真人(日経新聞編集委員)によると、「新型コロナウイルス感染症対策では、与党や官僚に対して『強い首相』と、分権改革後の『強い知事』の連携・調整の不備も露呈した」(清水真人『憲法政治』筑摩書房、2022年、p.18)という。こうした連携・調整の不備の背景には、各アクター間の相互不信もあった。

 権限が様々な機関に分化しているとすれば、政府はまずは中央・地方を問わず各機関を巻き込み、目標やビジョンの共有の徹底、統合、連携・調整のあり方を調整するという“正攻法”でのぞむべきであった。ところが、政府が実際に行ったのは、「新型コロナウイルスによってつくられた空気」を使った感染症対応であった。

 具体的に言えば、メディアを媒介させつつ、次に挙げる三つの手段によって、人々の間に「空気の支配」を徐々に醸成させていったのである。

 第一の手段は、新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法と称する)の解釈を通じてである。

 ただ、これには違法な解釈という指摘もある。たとえば、片山善博(自治官僚、鳥取県知事、総務大臣などの経歴がある)は、特措法第24条9項について次のように指摘する。

◆特措法第24条第9項
 都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。

 「ざっくばらんに言うと、第24条第9項は、『対策本部に協力してもらえませんか』と誰かに声かけする程度の内容なのに、権限という言葉だけを抜き出して、知事が前提条件なしに誰にでも何でも要請できるような解釈を政府がしていた」(片山善博『知事の真贋』文藝春秋、2020年、p.65)

 第二は、首相によって連発された法的根拠のない「要請」である。

 安倍首相は、「専門家会議に諮問するとか、その知見を聴取するなどの手続きを踏むことなく、突然、トップダウンで法的根拠のない『要請』を連発し」た(清水真人『憲法政治』筑摩書房、2022年、p.246)。しかも、菅義偉官房長官と萩生田光一文科大臣が学校の臨時休校を「要請」するという首相決断を知ったのは、何と当日であった(同書、p.246)。

 第三は、各府省が多用した通知である(参照:国会図書館HP「新型コロナウイルスに関する通知・通達(日本国内府省等)」2022年2月27日閲覧 )。

 新型コロナウイルス感染症は、地域間で感染者数の濃淡はあったものの、全国的な課題であった。ここでの問題は、専門的知見からみて通知内容が正しいものか、さらに判断する自治体が専門的知見や情報を有しているか、という点である。

 もっと言えば、通知内容が専門的に正しいとしても、通知という性格上、現場自治体が独自の判断を下しても法的問題は生じない。その場合、感染症対策は、不充分なものとなるおそれがある。

拡大umaruchan4678/shutterstock.com

感染症対応を困難にしている最悪の状況とは

 変異を重ね、数年単位で闘わなければならないウイルスに対して、はたして「空気の支配」に依ったこういう短期的で場当たりな対応で良かったのだろうか。

 「組織の環境適応理論によれば、ダイナミックな環境に有効に適応している組織は、組織内の機能をより分化させると同時に、より強力な統合を達成しなければならない。つまり、『分化(differentiation)』と『統合(integration)』という相反する関係にある状態を同時に極大化している組織が、環境適応にすぐれているということである」(戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎『失敗の本質』中央公論新社、1991年、p.358)。

 これは、アジア・太平洋戦争における日本軍組織の問題点を指摘した『失敗の本質』の一文であるが、コロナウイルスという感染症に対して、今の日本の執政府・行政府が統合を達成できたかというと、甚だ心もとない。

 上記の『失敗の本質』では、日本軍の戦略上の失敗要因として、①あいまいな戦略目的、②短期決戦の戦略志向、③主観的で「帰納的」な戦略策定——空気の支配、④狭くて進化のない戦略オプション、⑤アンバランスな戦闘技術体系、という点を挙げる。また、組織上の失敗要因として、①人的ネットワーク偏重の組織構造、②属人的な組織の統合、③学習を軽視した組織、④プロセスや動機を重視した評価、という点を指摘している(戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎『失敗の本質』中央公論新社、1991年、pp.263-340)。

 分化と統合、戦略と組織のあり方など、当時の日本軍組織と現在の執政府・行政府とでは、悪い意味で今なお色あせない共通点がたしかにある。そのうえで指摘しておきたいのは、「統合」しようにもできない、現場の公務員が置かれた最悪の状況が、今日の感染症対応をより困難にさせているという点である。以下、具体的に見ていきたい。

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筆者

岡野裕元

岡野裕元(おかの・ひろもと) 一般財団法人行政管理研究センター研究員

1989年千葉県佐倉市出身。学習院大学法学部卒業。学習院大学大学院政治学研究科政治学専攻博士後期課程修了、博士(政治学)。現在、一般財団法人行政管理研究センター研究員のほか、報道番組の司会者の政治アドバイザーも務める。元青山学院大学文学部・学習院大学法学部非常勤講師。専門は、地方政治、政治学。著書に、『都道府県議会選挙の研究』(成文堂)、『官邸主導と自民党政治――小泉政権の史的検証』(共著、吉田書店)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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