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問題だらけのコロナ感染症対応から考える公明党の機能~自民党とどう違うか

「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【2】

岡野裕元 一般財団法人行政管理研究センター研究員

「強い官邸」のもと変容した自民党

 ここまでみてきた三つの理由から、官僚機構が能動的な機能を発揮しにくくなっている以上、国民は政党に期待する他ない。具体的には、自民、公明の与党か、次の選挙で野党に政権交代を託すしかない。

 自民党は、「強い官邸」、「強い総理」のもとで明らかに変容した。「自民党の部会も出席議員が減り、活気を失った。かつては族議員がいて口角泡を飛ばす議論が続いた。今や、首相官邸の意向を受けて各省庁が決めた法案や方針を了承する場になり、元官僚の議員は『議員同士で議論して物を決めている感じがなくなった』と言う」(朝日新聞取材班『自壊する官邸』朝日新聞出版、2021年、p.55)。

 また、第2・3次安倍政権期の自民党を分析した中北浩爾(一橋大教授)は、「官邸主導で作成された政策案がスケジュールつきで投入され、修正の余地が乏しくなるなど、審議の形骸化が進んでいる」と指摘する(中北浩爾『自民党——「一強」の実像』中央公論新社、2017年、p.118)。議員教育という視点からも、その影響が年単位で残り続けるだろう。

拡大首相官邸 slyellow/shutterstock.com

相対的に自立性を保った公明党

 一方、公明党はどうか。筆者は相対的に自立性を保ったと見ている。

 そもそも政党が異なるため、自民党総裁からの力が直接は及ばない。また、閣僚枠を一つにあえて抑制しているうえ、党代表を閣内に送り込んでいないこともあり、自民党国会議員や官僚のように強い官邸に「取り込まれる」という事態も最小限ですんでいる。

 また、中央・地方間の行財政、政治の関係のあり方、様々な機関に分化する権限、疲弊する公務員、強い官邸が人事権を梃子にすることで生じた忖度行政、自民党内での部会審査の形骸化(忖度)と出席者の減少、といった悪条件が重なり、コロナ禍という全国規模での感染症災害にもかかわらず情報の目詰まりが生じるなか、公明党は情報の目詰まり解消の点で、重要な役割を果たすことになった。この点について詳述する。

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筆者

岡野裕元

岡野裕元(おかの・ひろもと) 一般財団法人行政管理研究センター研究員

1989年千葉県佐倉市出身。学習院大学法学部卒業。学習院大学大学院政治学研究科政治学専攻博士後期課程修了、博士(政治学)。現在、一般財団法人行政管理研究センター研究員のほか、報道番組の司会者の政治アドバイザーも務める。元青山学院大学文学部・学習院大学法学部非常勤講師。専門は、地方政治、政治学。著書に、『都道府県議会選挙の研究』(成文堂)、『官邸主導と自民党政治――小泉政権の史的検証』(共著、吉田書店)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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