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「怠惰のトライアングル」で世界のコロナ対策から遅れる日本~上昌広氏に聞く

コロナ対策徹底批判【第四部】~上昌広・医療ガバナンス研究所理事長インタビュー⑰

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

 この国の「専門家」と称する人たちはコロナウイルス対策をほとんどすべて間違えた。今も間違え続けているが、その過ちを決して認めようとしない。過去の過ちを弥縫(びほう)するごまかしの「対策」を提言し、自民党政権はその「対策」を黙認してきた。誤った「対策」の発信源である厚生労働省の医系技官を取材する厚労省記者クラブの医療記者たちの批判の目は鈍く、「感染症ムラ」に棲息(せいそく)する「専門家」は国民を誤導し、メディアで素人のような「解説」を続ける。

 絶望的な「怠惰トライアングル」の下で、日本は世界の流れから決定的に取り残されている。臨床医でありながら世界最新の医療知識を渉猟し、内外の医療界にも詳しい医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏に、この国の「専門家」のあり方について具体的に話を聞いた。

拡大上昌弘・医療ガバナンス研究所理事長

「感染症ムラ」の本音そのままのコメント

――政府の分科会会長の尾身(茂・地域医療機能推進機構理事長)さんや会長代理の脇田(隆字・国立感染症研究所所長)さん、押谷(仁・東北大学大学院教授)さんたちについてはこれまでいろいろ話をお聞きしましたが、もう一人、川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんもこの分科会とその前の専門家会議に顔を出していますね。岡部さんは2020年3月10日に東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見をしているのですが、ぼくもそれに参加して質問したんですよ。

 私のメモによると、私の質問と岡部氏の答えは次のようなものであった。

――日本の検査体制は韓国とは対照的に見える。韓国は積極的にPCR検査をして積極的にコロナウイルスを抑え込んでいこうとする考えのようだが、日本の場合はPCR検査をあまりしないで、自粛を要請するスタイルだ。
 今、検査を受けられずに自宅で熱に苦しむ人たちを指して「検査難民」という言葉まで出てきているが、医療の原則から言えば韓国のやり方の方が理にかなっているのではないか。

岡部 日本では発熱すると90%以上の人が検査を受ける。それで検査というものに非常に重きを置くわけだが、インフルエンザを見ても、症状が出ていないのに陽性の結果が出る人もいる。だから、その人が陰性だったからと言って大丈夫とは医学的には言い切れない。そういう検査の限界部分を知らなければならない。
 韓国が、感度とか時間とかどのくらいの検査をしているのかわからないが、日本の場合は相当厳密な体制でやっている。
 心配だという人も含めて検査をやるということになると全部やることになってしまう。それは不可能だ。だから私は、少なくとも症状のある人が検査の対象になるのではないか、と申し上げている。

 岡部さんは別のインタビューに対しても「私ならば何を重視するかと言えば、重症者の早期発見と早期治療、それによる早期の拡大予防です。軽い人も症状のない人もすべからく心配だから検査をしていくということはやめた方がいい」(2020年1月30日、バズフィードジャパン)と言ったり、「(流行が長引いた)その時には症状が軽い人には目をつぶるという覚悟が社会になくてはなりません」(同3月6日、同)と語ったりしています。

 PCR検査を抑制していこうという「感染症ムラ」の本音をそのまま出したようなコメントです。軽症者でも無症状者でも感染させてしまうことがわかっている現在から見れば異様なほど無意味な答えですが、当時でも「検査と隔離」という感染症対策の基本を踏み外したコメントですね。

上昌広 徹頭徹尾、患者目線ゼロ、無意味なコメントです。私は保健所長から聞いていますが、感染研ではなくて保健所のPCR検査というのは、コンタミネーション(混入)で失敗しまくって、擬陽性がいっぱい出るんです。PCR検査というのは感度が高いので、簡単に他の異物のコンタミで汚染させてしまうんですね。だから、検査センターとかは完全な機械化をしたりして、極力汚染を防いでいるんですね。だけど、保健所なんかはそういうところに投資できないので無理なんですよ。

 岡部さんはこういう事情を本当に知らないのか、あるいは強弁しているのか、保健所がしっかりしているのに検査会社はいい加減だと、何の根拠もなく言い続けてきたんです。テレビはそれをそのまま流しているんですよ。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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