プーチン政権の途方もない邪悪さを思い知らされた「国際社会」が取るべき道は
2022年03月04日
2月28日、かつてなく世界の目が集中するなかで、ロシア、ウクライナ両国の代表団による停戦協議が始まったが、案の定、ロシア側の理不尽な主張によって交渉は暗礁に乗り上げている。協議自体は継続しているものの、先行きは依然、不透明だ。
報道によると、協議に先立ってウクライナの大統領府は、「ロシアとの協議の最も重要な議題は、即時の停戦とウクライナ領土内からのロシア軍の撤退だ」と表明したという(2月28日朝日新聞デジタル)。これは当然の主張であり、それでなければロシア代表団と会う意味はない。
これに対し、ロシア側が勝手に要求する協議課題は。①ゼレンスキー政権の退陣、②ウクライナの非軍事化(武装解除)、③ウクライナの中立国化(NATOへの非加盟)――であると報道されている。
ロシア側のこうした要求は、あまりにひど過ぎるとして、世界を啞然(あぜん)とさせている。これは停戦協議というものではない。まるで降伏協議ではないか。
このロシア側の傲慢極まる態度によって、協議を通じて戦争は終わるかもしれない、ロシア側がウクライナから撤退するかもしれないという、ほのかな期待も裏切られた。そして、「国際社会」はプーチン政権の途方もない邪悪さを、思い知らされたのである。
ここで私が言う「国際社会」は、世界の国々というよりも、“世界の人々”と言うべきであろう。それほどまでに世界の人々は今、ロシアの暴挙に対して怒り心頭になっている。そればかりか、ロシアのとんでもない暴挙に立ちはだかるために、自分に何ができるのかを、多くの人たちが自らに問うまでに至っている。
くわえて、もしここでロシアの主張を認め、「覇権主義」に道を開けるという事態になれば、中国による台湾への侵攻も一気に現実味を帯びてくるのではないかということもまた、世界の人々は感じ取っている。
人は誰であれ、「自由」や「独立」が侵害されたとき、あるいは家族や友人が陵辱を受けているとき、一身を捨てるという覚悟ができるものだと私は思っている。人類の長い歴史を振り返るとき、人々は圧政や弾圧といった様々な苦難をそうやって乗り越え、今という時代をつくってきた。
侵攻の翌日であったか、キエフの空港に到着した一人の青年の発言を、私は忘れることができない。
「なぜ、キエフに来たのか」と問われた彼は、次のような趣旨の返答をした。
「祖国を守るために帰ってきた。これから家族や友人のために戦う」。
気負いも何もない。淡々と語るだけにかえって迫力を醸し出す彼の姿を見ながら、「がんばれ」と声を出さずにはいられなかった。
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