プーチンとの対話の細い線が繋がっているマクロンに打つ手はあるのか
2022年03月04日
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始(2月24日)から1週間が経った。プーチン大統領は3月3日、マクロン仏大統領と電話会談をおこない、攻撃は「(ウクライナの)非武装化達成の作戦完遂」まで続行すると宣言した。
誰がこのプーチンの暴挙、“鉄の意思”を停止させ、ウクライナを救済することができるのか。目下のところ、成果があまり上がっていないにせよ、国際社会でプーチンとの対話の細い線が繋がっているのはマクロンしか見あたらない。
マクロンは3日のプーチンとの90分の会談後、「『最悪の事態だ』と呟いた」と伝えられる。
マクロンとプーチンとの会談はこれで5回目。1回目は2月7日。危機が高まるなか、モスクワのクレムリン宮殿で対峙(たいじ)した。5時間の会談後、共同記者会見が開かれ、プーチンはウクライナに侵攻せずのような態度を示した。
2回目は2月12日の1時間40分の電話会談。バイデン米大統領とプーチンの電話会談に先立ち、マクロンが「ミンクス合意」(2014年に始まったウクライナ東部紛争を巡って2015年2月にロシア、ウクライナ、仏独の4カ国で合意)の順守を要請したのに対し、「ロシアのウクライナへの攻撃」は「挑発的なスペキュレーション(目論見)」と一蹴し、「攻撃なし」の態度だった。
3回目は2月20日。「危機に対する外交的解決を優先する必要性のために、近々に緊密な外交的業務を実施」などで合意した。
ところが、ロシアは2月24日にウクライナ攻撃を開始。マクロンの面子は丸つぶれだった。すでに1回目のクレムリンでの会談でも、会談が長さ5メートルのテープルを挟んで行われたため、野党側は「フランスが侮辱された」とマクロンを非難した。
この5メートルのテーブルは、“公式説明”によると、マクロンがモスクワ到着時のコロナ感染テストを拒否した結果、ロシア側が「社会的距離」を取るための措置ということになっている。フランスメディアは「マクロンがロシア側にコロナ検査の際、DNAを採取されるのを嫌ったから」として、KGB出身のプーチンを相手にした時の警戒の必要性を強調した。
マクロンはプーチンのこれらの“侮蔑的”な扱いにもかかわらず、ロシアのウクライナ侵攻後の2月28日にも電話会談し、「市民と住宅への全攻撃の停止」などを要請した。これに対し、プーチンは要請の受け入れを表明すると共に、「市民への攻撃なし。市民の死者は皆無」として、ウクライナ側の発表は虚報だと断じた。
※ロシアのウクライナへの軍事侵攻に関する「論座」の記事は特集「ウクライナ侵攻」からお読みいただけます。
3月3日の電話会談はプーチンからの要請だった。
マクロンは前日2日のラジオ・テレビ演説で、「プーチン大統領による暴虐な攻撃」を非難、「今後、(攻撃は)ますます強まるだろう」と国民に警告した。フランスが臨戦状態であることを示唆し、ウクライナからの「難民の受け入れ」や「経済的社会的な結果」への覚悟を国民に迫った。
フランスは石油=ガソリンや(天然)ガスを産地のロシアから輸入している。ロシアとは農業面での輸出入も活発だ。すでにガソリンやガス、小麦などが値上がりし、国民生活を直撃している。EUとしては、武器などの提供やウクライナからの難民受け入れを決めているが、フランスにもこの1週間で1000人が到着し、個人が自宅の一部屋などを提供している。
このラジオ・テレビ演説では、「この戦争は、一部が書いているように、NATO (北大西洋条約機構)及び西側と、ロシア及びその他との紛争ではない。NATOの軍隊も基地もウクライナ内には皆無。ロシアの虚偽だ。ロシアは攻撃されていない。ロシアが攻撃者だ」とロシアを糾弾した。
プーチンがマクロンに電話をかけてきたのは、この「ロシアが攻撃者だ」の指摘に対し、事実無根と抗議するためだった。約90分間の会談で、プーチンは過去にまで遡って、いかに大国ロシアが冷戦後、領土を不当に失ったかを主張し、ウクライナ占領は失った領土を取り戻すためとの当然の行為であるとの持論を繰り返した。ただ、プーチンはマクロンの発言を「率直」と指摘したうえで、今後も対話を続けることを言明した。
マクロンとプーチンの会談は毎回、マクロンがプーチンにしてやられている感じだ。それでもマクロンが懲りずに対話を続けているのは、
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