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歴史の歯車を動かしたロシアのウクライナ侵攻~「冷戦後2.0」の世界と日本

私たちの前に出現した新しい形の「冷戦後」に日本はどう向き合うのか

星浩 政治ジャーナリスト

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続き、多くの民間人の犠牲者が出ている。米国をはじめ国際社会の非難が高まり、ロシアへの経済制裁が強化されている。この事態をどう読み解くか。

 第2次世界大戦後の冷戦が終結し、ベルリンの壁崩壊によって「冷戦後」が始まったとすれば、いま、私たちの前に出現しているのは、新しい形の「冷戦後」、つまり「冷戦後2.0」だろう。冷戦後の国際秩序に挑戦するロシアにどう立ち向かうか、その後の平和構築をどう進めるかが問われる。

 そして、冷戦時代に経済の繁栄を謳歌し、冷戦後への外交が定まらなかった日本にとって、この冷戦後2.0にどう向き合うのかが試されている。

キエフ近郊で炎を上げて燃える建物。ウクライナのゲラシチェンコ内相顧問が3月3日、SNAに投稿した写真

異例の展開を見せたウクライナ危機

 ウクライナ危機は異例の展開を見せた。米国は「情報公開抑止(Deterrence of disclosure)」の方針の下に、ロシア軍の動向に関する機密情報をいち早く公表。ウクライナ侵攻が迫っていることを明らかにして、国際社会の結束を呼び掛けた。それでもロシアは、ウクライナ東部の二つの「共和国」承認を理由に軍事侵攻を強行。国際社会は「力による現状変更の試み」として一斉に批判した。

 国連は緊急特別総会を開き、ロシアに即時撤退を求める決議を圧倒的多数で可決。欧米や日本はロシアの大手銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除やロシア要人の資産凍結など、経済制裁を強めている。

 戦況は、ロシアの大規模進軍に対してウクライナ側が抵抗。北大西洋条約機構(NATO)側からウクライナへの偵察情報の提供や武器支援などで、ロシア軍が苦戦を強いられている地域も多いという。ロシア軍の攻撃は多くの民間人を巻き込んでおり、世界中から非難の声が高まっている。

軍事大国・ロシアにどう対抗するかという難問

 ベルリンの壁が崩れ、当時のブッシュ(父)米大統領とゴルバチョフ・ソ連共産党書記長が「冷戦終結」を宣言してから30年余。欧州では、経済面でEUの枠組みが(英国の離脱はあったものの)広がり、安全保障面ではNATOがポーランドやバルト3国など東方に拡大した。

 NATOの拡大がウクライナにまで及ぶのは何としても阻止したいというのが、ロシアの侵攻の論理だ。冷戦後は、旧ソ連圏も含めて、民主主義、市場経済、国際協調という共通のルールで世界が動くはずだったが、プーチン大統領のロシアは民主化に背を向け、市場経済も徹底せず、さらには国際協調の枠組みにも挑戦してきた。今回の侵攻では、大量の核兵器を保有し、最新鋭のミサイルや戦闘機などを配備する軍事大国・ロシアにどう対抗するかという難問が、国際社会に突き付けられた。

 米国を含むNATO諸国はウクライナが同盟国ではないため、直接の軍事介入はできないと判断。武器供与などの側面支援とロシアへの経済制裁を強めることになった。ロシアの軍事侵攻とウクライナ側の抵抗、制裁によるロシアへの打撃。それぞれが今後どう展開するかが焦点である。

プーチン政権を巡る現実的なシナリオ

 もっとも、ロシアが10万人を超える軍隊を派遣しても、人口4000万のウクライナ全土を制圧するのは容易ではない。

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