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ウクライナ侵攻に潜むロシアの野望と欧米の事情~揺るがぬプーチンの鉄の意志

欧米はこのままロシアの暴虐を座視するのか。舞台裏の密かな和平交渉はあるのか……

山口 昌子 在仏ジャーナリスト

 ウクライナへの軍事侵攻はロシアの勝利で終わるのか。プーチン大統領はマクロン仏大統領との会談で、「(ウクライナの)非武装化達成の作戦完遂」を宣言。米欧は第4次世界大戦のリスクを恐れて、NATO(北大西洋条約機構)軍をウクライナに派兵するつもりは、今のところ、ない。冷戦終了で唯一の超大国になったはずのアメリカは、弱体化が進んでいる。

キエフの北東約130キロにある都市チェルニーヒウで2月3日、空爆を受けて煙を上げる高層住宅とみられる建物=チェルニーヒウ州当局のSNSから

ウクライナ完全制覇は「達成されよう」

 仲介役を任じるマクロンは3月6日にもプーチンと会談を行い、1時間45分の長時間、話し合った。この会談でプーチンは、「交渉によるにせよ、戦争によるにせよ、目標は達成されよう」とウクライナの完全制覇を目指していることを繰り返し、“鉄の意思”が揺るがないことを示した。

 マクロンから今回、プーチンに電話会談を申し込んだのは、ウクライナのゼレンスキー大統領が、「ロシア軍のオデッサ(ウクライナの主要港湾都市)への爆撃」の中止をプーチンに要請するように訴えてきたからだ。

 マクロンはプーチンに「オデッサ爆撃の中止」とともに、「国際的人権の十全な尊重」及び「市民の保護」を要請。特に市民の安全な脱出を保障するための「人道回廊」の設置を要請した。

 これに対しプーチンは、ロシア軍が「市民を標的にしたことなし」と否定。包囲されているウクライナから脱出するのも留まるのも、「ウクライナ人の責任」と主張した。

 一方、ウクライナは「人道回廊」の設置には、「拒否」を表明した。「人道的回廊」のすべての出口がロシアに繋がっているからだ。要するに、ウクライナ人をロシア内に誘導し、「人質」か「捕虜」にするという計画が見え透いているというわけだ。マクロンも民放テレビのニュース専門局の質問に、ロシア側の対応を「まじめでない」と一蹴した。

Photographer RM/shutterstock.com

※ロシアのウクライナへの軍事侵攻に関する「論座」の記事は特集「ウクライナ侵攻」からお読みいただけます。

「非ナチ化」という表現の含意

 また、プーチンはマクロンとの長時間会談で過去にも主張してきたように、米仏などに対し、「非ナチ化」や「クリミヤのロシア併合(2014年)」「ドンバス(ウクライナのドネツク州とルハーンシク州で2014年から戦争が続く)の独立」の承認を要請した。そのうえで、「原発への攻撃の意図なし」を約束したが、一方で、「交渉によるにせよ、戦争によるにせよ、目的は達成されよう」と宣言し、ウクライナの完全制覇が目的であることを強調した。

 この「非ナチ化」という表現は、プーチンが最近しばしば使うレトリックだ。第2次世界大戦中、ロシア(当時のソ連)は、レニングラードでの激戦など対ナチと果敢に戦い、2700万人が犠牲になった。アウシュビッツ強制収容所を解放したとの自負もある。

 ところが、こうしたソ連軍の働きは認められず、戦後、とりわけ冷戦によって、まるでナチに対するかのように「ロシアへの敵視」が芽生えたことを、皮肉交じりに表現したものだ。クリミヤ併合(2014年)時やドンバスの独立」(2014年以降戦争続行)問題でも盛んに、この言葉を使っている。

Rokas Tenys/shutterstock.com

及び腰のNATOと弱体化した米国

 プーチンが強気なのは、NATO軍が目下、ウクライナ戦に参戦しないことにもよる。アメリカとしては、NATO軍が参加したら、第4次世界大戦に発展する可能性があると考えているからだ。

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