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日本の政治と行政のあり方を変える!「橋本行革」の理想と挫折~令和の改革の課題は

時代に適合する行政のあり方を追求したはずなのに霞が関はなぜ機能不全に陥ったのか?

福島伸享 衆議院議員

新たな課題対応の障害になった霞が関のシステム

――なるほど。

福島 1980年代末から90年代にかけて、冷戦後に取り組むべき新たな課題が、次々と表面化しました。先ほど挙げた環境問題について言うと、1992年にはブラジル・リオデジャネイロで国連の地球環境サミットが開かれ、気候変動や生物多様性を理由にした国際的な経済ルールが形成される端緒となりました。

 そうした状況においては、新しい価値の体系や経済社会システムをつくる競争に、日本がどう参画していくかが死活的に重要になります。その際に障害になったのが、最終報告書でも触れられている日本の従来の制度、具体的には、霞が関の行政のシステムでした。橋本行革の眼目は、まさしくこのシステムの変革にありました。

――先述したように、橋本行革の二本柱は、中央省庁再編と内閣機能強化です。なかでもメディアは当時、省庁再編に注目し、「抜いた、抜かれた」でしのぎを削っていた記憶があります。

福島 霞が関を、1府22省庁から1府12省に再編したわけですが、私たちにとっては、省の数を減らしたり、公務員の数を減らしたりすることが目的ではなく、従来の「縦割り」行政のあり方を変えるというのが最大の狙いでした。

拡大省庁のビルが立ち並ぶ霞が関の官庁街=2018年10月19日、東京都内、朝日新聞社ヘリ

哲学の転換だった「目的別省庁再編」

――1990年代半ば、私も政治記者として幾つかの役所を担当しましたが、霞が関の「縦割り」は本当に強固でした。

福島 それまでの官庁は、森羅万象あらゆるものを切り分け、担当を決めて仕事をしてきました。この省の仕事はここまで、局はこれぐらい、課はどれぐらいと決め、与えられた業務を前例踏襲で執行するわけです。逆に言うと、それ以外のものには手を出さない。

 私たちはこれを根底から覆そうとしました。当時、「目的別省庁再編」と言ったのですが、例えば国富の拡大、格差の是正、文化の創造、国土の保全といった目的別に省を再編、目的を実行するための組織への脱皮を狙った。ある意味、哲学の転換ですね。

――哲学の転換?

福島 明治以来、連綿と続いてきた分担管理原則によって事務を分担する行政組織から、目的を実現するための政策を創造する行政組織へという、組織哲学の転換です。

内閣機能強化の本当の狙い

――もう一つの柱である内閣機能の強化とはどういうことですか。

福島 行政には大きく分けて二つの機能があります。ひとつは目的を実現するための制度をつくること、もうひとつはその制度を運用することです。後者は、法令に基づく厳格な公平中立性が求められます。一方、前者は価値判断が伴うので、ある意味政治的にならざるを得ない。

 日本の行政組織はこの二つが混在していたため、ともすると前例踏襲的なものしかできず、新しい価値の体系や経済社会システムをつくることができなかった。これだと冷戦後の世界の大きな変化に日本の行政組織は対応できないとして、新たな制度をつくる部門と、制度を法令に基づいて運用する部門を分けようと考えたわけです。では、新たな制度をつくる主体は誰かといったら、時の政権。具体的には、議院内閣制の下では首相官邸ということになる。

――首相官邸というのは、首相や官房長官といった政治家ですか?

福島 価値選択が伴う決定をする正当性は、選挙を通じて選ばれたわけではない官僚にはありません。その資格があるのは民意の支持を受けた政治家です。とはいえ、政治家は価値を実現するための具体的な政策をつくれるわけでない。それを支える官僚が必要になります。価値選択をする政治家と、価値を政策に仕立てる官僚で構成する内閣の機能を強めようというのが、私たちが内閣機能強化として想定したものでした。

 つまり、内閣機能強化の前提は、価値の選択を政治がきちんとおこなうということに他なりません。その意味で、行政改革は実は政治改革とセットでした。

拡大首相官邸=2021年7月17日、東京都千代田区永田町、朝日新聞社ヘリから

◇連載「福島伸享の『令和の政治改革』」の記事は「ここ」からお読みいただけます。

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筆者

福島伸享

福島伸享(ふくしま・のぶゆき) 衆議院議員

1970年生まれ。1995年東京大学農学部を卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省。橋本龍太郎政権での行政改革や小泉政権での構造改革特区制度の創設の携わる。2009年衆議院議員初当選(民主党)の後、2021年の衆議院議員選挙で3選。現在無所属で5人会派「有志の会」に所属。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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