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パリから見えるロシアとウクライナの今~旧ソ連国民の心の解放と東から西への流れ

ヨーロッパの市民によるロシア市民へのメッセージはどこまで届くのか……

永田公彦 Nagata Global Partners 代表パートナー

 ロシアのウクライナへの軍事侵攻は、世界中に影響を与えている。ウクライナに隣接するヨーロッパでは、その影響は日本でよりもずっと大きい。かねてよりウクライナやロシアとの関係が深いフランスも例外ではない。

拡大ロシアのウクライナ侵攻に抗議するパリの市民たち=2022年3月5日、共和国広場(筆者撮影)

「ロシアの市民社会に変化が」

 「毎日のようにロシアの同胞から情報が入るが、ここ1週間でロシア国内の市民社会は急変している。失業者が増え、反戦の動きが路上と地下で拡がっている。また知識人やIT関係者を中心に、母国を離れ出している。行先は、アルメニア、ジョージア、トルコ、カザフスタンなどだ」

 筆者の取材に応じたパリ在住ロシア人のベロニカ・トゥマーノワはこう語る。彼女とは数日前、パリのウクライナ教会の支援活動を通じ知り合い、取材を依頼していた。

 彼女は、モスクワ生まれのモスクワ育ち。19歳でロシアを出て、もはやドイツとフランスでの生活が長くなったアルゼンチンタンゴのダンス講師だ。家族の一部はウクライナ南東部の村におり、18歳までは夏休みの多くをそこで過ごしたという。

 こうした経験を踏まえ、ロシアとウクライナの二つのサイドから、歴史(旧ソ連時代から現在まで)と、いま両国で起きていることを見ていることを、1時間以上の取材を通じて強く感じた。

ロシアの市民にメッセージを発するパリ市民

 他方、パリでは市民がロシアの市民の背中を押そうとする動きも目立つ。

 筆者は週末に2回連続してパリの共和国広場での反戦集会に参加したが、とにかく大きな市民パワーを感じる。会場には、子供連れ家族、老夫婦、政治家、若いカップル、メディアなど多く集まる。国籍も、フランス人やウクライナ人はもとより、ロシア人、ジョージア人、アフリカ系、アジア系市民など様々だ。

 彼らが掲げるプラカードを見ると、ロシアの市民に向けたメッセージが目に付く。「ロシア人よ、プーチンを止めて、ヒーローになれ」「ロシアとベラルーシの皆さん、反戦のために立ち上がれ」などだ。

拡大ロシアのウクライナ侵攻に抗議するパリの市民たち=2022年3月5日、共和国広場(筆者撮影)
拡大支援活動をするウクライナ救済協会の人たち=2022年3月5日、パリ19区(筆者撮影)
※ロシアのウクライナへの軍事侵攻に関する「論座」の記事は特集「ウクライナ侵攻」からお読みいただけます。


筆者

永田公彦

永田公彦(ながた・きみひこ) Nagata Global Partners 代表パートナー

フランスを拠点に、フォーチュン・グローバル500企業をはじめ数多くの欧州やアジア系企業に対し、国際経営・事業・組織コンサルティングをおこなう。西南学院大学(文学部)卒業後、82年JTBに入社、本社及び海外事業部門のマネジャーを経て、96年フランスに拠点を移す。MBA(EMリヨン)を取得後、リヨン商工会議所(アジア担当マネジャー)、欧州系調査コンサルティング会社などを経て2003年より現職。リヨン第二大学非常勤講師(アジア経済・経営修士コース 1998~2000年)、北九州市立大学特任教授(グローバル人材育成教育 2013~16年度)、パリ第9大学非常勤講師を歴任し、現在はフランス国立東洋言語文化学院で非常勤講師を務める。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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